どこからか聞こえる声

まだ私が中学生だった頃のお話です。

その頃、私の寝床はロフトベッドでした。家の北側にある自分の部屋に置かれた大きなロフトで、隠れ家のようで気に入っていました。
いつも梯子のある方と逆の方に枕を置いて寝ていたのですが、その日は何となく気分を変えようと、枕を逆の位置、つまり梯子のある方に置いてみました。

家族におやすみと言い、いつものようにロフトベッドに上がって横になりました。しばらくしてうとうととしていると、前触れもなく突然金縛りに遭いました。
金縛りに遭うのはこれが初めてではありません。金縛りは科学的に説明ができると聞いたことがあり、特に心霊的な意味で怖いとは思わなかったのですが、私の金縛りは体が動かないだけでなく、呼吸もしづらくてとても苦しいものでした。
早く治らないかな、と思ったその時。
梯子の方から、細くて高い声の歌声が聞こえてきたのです。

家族がテレビを見ているのかと思ったのですが、そんなにはっきりした音ではありません。
私は梯子から顔を背ける形で横になっていたので、梯子のある方の様子は分かりません。
それなのに、何故かはっきりと、その声の持ち主が小さな女の子であることが分かったのです。

そして、その女の子が梯子のところにいることも…。

ぞっとしました。
歌がむしろ優しいメロディで、余計に怖くなりました。
女の子はそこから動く気配はありません。

逃げ出したい一心で、金縛り解けろ、解けろ、と念じて勇気を出して大きく息を吸ったその瞬間。
歌声も女の子の気配もフッとなくなり、金縛りも解けました。

バクバクいう心臓を落ち着けて、しばらくしてから家族のところに行き、何かテレビを見ていたか聞きましたが、何も見ていなかったと言われました。
後から気付いたのですが、ロフトベッドの梯子のある方は北側。つまり北枕になっていました。

枕の位置を変え、それ以降はそのようなことは起きませんでした。

今でも思い出しては背筋が冷たくなっています。