そして、その騎手の姿が何かおかしい。
僕は双眼鏡を取り出した。
見えた。
騎手の首が、不自然な角度に曲がっている。
まるで首の骨が折れて、頭だけが横を向いているようだった。
しかも、その馬はレース中の馬たちを追いかけているのではない。
観客席の方へ向かって走っている。
僕と目が合った。
その瞬間。
男の頭が、ゆっくりこちらを向いた。
雨の音が突然、遠くなった。
男の顔は真っ青だった。
僕は怖くなって、すぐに双眼鏡を離した。
最終レースが終わると同時に、競馬場を出た。
駐車場まで走った。
車に乗り込んで、エンジンをかける。
その瞬間、バックミラーに何かが映った。
さっきの馬だった。
駐車場の入口に立っている。
騎手も乗っている。
僕はアクセルを踏み込んだ。
バックミラーを見る。
何も映っていない。
「見間違いだ」
そう思った。
しかし、競馬場から数キロ離れた交差点で信号待ちをしていると、
後ろから、
パカッ……パカッ……
という音が聞こえた。
馬蹄の音。
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