自分はというと、元々体毛も薄毛でスネもツルンとしていて、男としては弱弱しく感じていたので毛深くなることにはなんのためらいもなかった。
「たぶん、髪も爪もケラチンとか言うもので出来ているから、同じ成分なので反応してるんじゃないかな」そんな説明をする部長。
「あの・・・毎日飲んでるって、飲むのやめるとどうなるんですか?」
「あぁ、なんかね、発毛のサイクルを整える効果があるらしいから、やめるとしばらくしてまた元通り発毛サイクルが狂ってきて、だんだん抜け毛が多くなって元に戻っちゃうんだよね。自分も毛が生えたって喜んで、油断して一時的にクスリ止めたらまた抜け毛が増えてさ、それでもう毎日飲むことにしたんだよ」
「へぇ~。でも、一生飲まなきゃいけないって・・・ちょっと負担ですね」
「まぁそうかもしれないけど・・・そんなに深刻に考えることもないんじゃない?どうせみんな年を取ればハゲていくんだから、ハゲが似合うお年頃になったらクスリもやめて、潔くおじいちゃんになればいいのさ」そう言ってまたガハハと笑う部長。
「そ、そうですよねぇ。年取ったらハゲてても別に違和感ないですもんね」
「じゃ、明日クスリ持ってくるよ。楽しみにしといて」
「あはは、じゃあホントに生えてきたら、その時はお酒でもおごらせていただきます」
・・・そんな男同士の秘密の会話が、休憩時間の洗面所で交わされた。
・・・・・・・・・・・・
翌日、高尾部長から約束通りクスリをもらった山田さんは、その夜、試しに一錠飲んだ。
1日1回、寝る前に飲む。
市販の風邪薬よりも一回り小さい黄色い錠剤だった。
「こんな少ない量で効くのかなぁ・・・」と少し不審に思ったが、
部長の言うとおりに試しに飲んでみた。
1週間もたったころ、山田さんは鏡を見て驚いた。
「は、生えてる・・・ホントに生えてる!!」
毎日毎日鏡とにらめっこして、薄毛と格闘してきた山田さんだ。
自分のハゲの限界地点が今どこなのか、どの辺の髪が残っているのか、どのあたりの頭皮が痛んでいるのか、毎日目を皿のようにしてチェックしている。
それがなんと、危険地帯の生え際に産毛のように細く小さな毛がふわっとたくさん生えてきているのである。もう新しい髪は生えてこないと思っていたのにである。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」思わずうれしくて叫び声をあげてしまう山田さん。
このクスリは本物だ。効く。頭皮に炎症なども現れていない。これは期待が持てる!!
だが・・・だが、部長からもらったクスリはあと3錠しかない。
今クスリをやめれば、せっかく生えたこの産毛たちも、きっと育たずに抜けていく。
この千載一遇のチャンスを逃すことは山田さんには絶対できなかった。
だからこの日、山田さんは部長に報告がてら、クスリを追加でもらえるよう交渉した。
「100錠入りのやつで1万円でどう?」部長が金額を提示してきた。
「い、1万円ですか~・・・」高い、いかによく効くクスリだからと言って1万円かぁ~と悩む山田さん。
「いや、実はね・・・このクスリ、日本ではまだ販売してないんだ。ほら、私は海外営業部で1年前までインド支社にいただろ?向こうにいた時にこのクスリを知ってね。今でも自分の分だけ個人輸入してるんだよ。けっこう手間だし、送料もかかるし、第一今って円安だろ?海外から取り寄せるのにもお金が余計にかかるのさ」
























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