シュウウウッ! と勢いよく霧が吹き付けられる。
「ぎゃあああ! 臭い! 無理!!」
口裂け女は猛烈な悪臭 (と科学の力)に絶叫し、激しく咳き込んだ。
「やっぱり! 嗅覚受容体に強烈な刺激を与えることで、脳の扁桃体が過剰反応してるんだ!
再現性バッチリじゃん!」
ウジンはノートに素早くメモを取る。
「く、狂ってるわ、このガキ・・・・・・! 殺してやる!」
怒り狂った口裂け女が、巨大なハサミを振り上げて襲いかかってきた。
「おっと、時速100キロで走るって噂だけど、この狭い路地なら僕の勝ち!」
ウジンは手元のコントローラーを鮮やかに操作した。
愛用の電動車椅子は、彼が科学部の予算(と小遣い)を注ぎ込んで改造した、
高出力モーター搭載の特別仕様だ。
ウィィィン! と小気味いいモーター音を響かせ、ウジンは華麗なドリフトでハサミを回避。
そのまま迷路のような住宅街の路地を、凄まじいスピードで駆け抜ける。
「あはは! 追いつける!? 遠心力と摩擦係数の計算なら僕の脳内コンピューターが
完璧に弾き出してるからね!」
車椅子でありながら、誰よりも自由で、誰よりも速い。
ウジンは完全にこのチェイスを楽しんでいた。
曲がり角を急旋回し、一気に大通りへ飛び出す。
そこは明るい街灯と、仕事帰りの人々が行き交う駅前だった。
追ってきた口裂け女は、急に人間が増えたことに怯え、ハサミを隠して立ち止まった。
ゼェゼェと息を切らし、完全に疲弊している。
ウジンは車椅子を止め、彼女を振り返って手を振った。























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