例の声が返事をする前に、
もう一人、
すぐ近くで呼吸している音が入っていた。
その位置は、
スマホの置いてあった机の横でも、
部屋の隅でもない。
録音から判断すると、
たぶん、
俺の枕元だった。
—
今はそのアパートには住んでいない。
録音も残っていない。
証拠は何もない。
ただ、今でもたまに思い出す。
もしあの声が本当に聞き間違いだったとしても、
ひとつだけ説明できないことがある。
俺は録音を聞いたあと、
部屋の間取りを書いて友達に見せた。
すると友達が、
顔色を変えて言った。
「待って。」
「俺が見たお前、そこじゃない。」
「立ってたのは、その部屋の隅じゃなくて――」
友達が指差した場所は、
俺が声を聞いたと思った場所でも、
スマホを置いた場所でもなかった。
俺が毎晩、
誰かの気配を感じていた場所でもない。
それは、
俺が寝ていた布団の真横だった。
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