本当に自慢じゃないんだが、俺には霊感がある。
子供の頃に何度か怖い思いをしてから、その嫌な感覚が霊感だと気づいた。
経験則だけど、危険なほど嫌な感覚が強くなる。
だからといって、戦えるとか追い払えるなんてことはない。
逃げるタイミングが分かる程度だ。
で、そんな俺の通学路にはシャッター商店街がある。
その中の散髪屋にハサミ女とかいうやつが出るらしい。
出会ったらハサミが刺さって死ぬらしい。
じゃあ、どうやって話が広まるんだ?って話だよな。
それに、その散髪屋はとうの昔に閉業してて、シャッターが開いてるところすら見たことがない。
それでどうやってハサミ女に出会えるっていうんだ?
不法侵入しましたって自白してるようなもんだぞ?
――って思ってたんだけど、昨日、通りかかったらシャッターが開いてたんだよ。
ガラス扉もご丁寧に。
その時は夕方で、外はまだ明るさはあったけど、店内はぼんやりとして、奥までは見えなかった。
変な気配もなかったし、レトロな散髪屋が懐かしくてちょっとだけ中を見てみたくなった。
で、スマホのライトで店の奥を確認したけど、スタッフルームへのドアくらいしかなかった。
改めて見回してみると理髪台があって、その前には大きな鏡と道具を置くスペースがあった。
道具なんかもきれいに片付けられていて、何もなかった。
もっと荒れた様子を想像していただけに拍子抜けだった。
不意に嫌な感覚があって、左目にハサミの先端が迫っていた。
反射的に投げ捨ててから、自分がハサミを握っていたことに寒気がした。
ハサミの落ちる音がやけに大きく聞こえて、景色が一変した。
埃まみれの床、腐食してひびの入った鏡。
背後から感じる嫌な感じ。
逃げなきゃいけないヤバさなのはわかっていたのに、身体が動かなかった。
少し離れた所に何かがいるのは確信してた。
だから、絶対に見たくなかった。
少しでも横を向けば、鏡に映ったそいつを見てしまうと思った。
見たくないのに、顔を伏せたいのに、自分の意思に反して首が捻られていった。
目も閉じられなかった。























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