その日の夜・・・大学のサークルで新歓コンパがあり、はじめて学生同士で飲み会というのをやった。楽しい。女子たちのノリも軽いし、いつのまにか自然に仲良くなってしまった。
・・・だから少し後悔したのだ。
・・・やべっ、あんなオンボロアパートじゃ彼女を部屋に呼べないじゃないか。
先見の明の浅さを恨みながらその日は帰宅した。
酔いも回っていい気分で布団に入ると、やはりまた赤ん坊の泣き声が聞こえだした。
・・・いや、ガマンガマン。もう壁ドンはしない。
せっかく脳裏にあったカワイコちゃんたちの顔が、一気に隣人の病的な顔に変わった。
そしたら今度は女の叫び声がする。キーキー騒いで、怒鳴りつけて、何かを壁に投げつけてくるような音と振動。
いったい何事だ・・・夫婦喧嘩でもしているのか?
モノなんか投げつけて、赤ちゃんが怪我でもしたらどうするんだ・・・。
余計な詮索なのは重々承知だが、だんだん心配になってきた。
そのうち、ガリガリと何かの金属で壁をひっかいているような音がし始めた。
オイオイオイオイ、夜中に工事でもはじめてんのかよ!
ボクは酔いも手伝って気が強くなっていたのか、これはいくらなんでも抗議しなきゃならんと思い、深夜の隣室に凸しにいくことにした。
ドンドンドン、と扉をたたく。
「あのぅ!! 今何時だと思ってんですか!! 静かにしてください!!」
ドスドスドスと足音がこっちに向かってきたかと思うと、おもむろに扉が開いた。
ひえっ!!
ボクは一瞬、恐怖にたじろいでへたりこみそうになった。
鬼の形相のあの女が、包丁を持って立っているのだ。
こ、殺される・・・隣人トラブルで!?・・・注意しただけなのに殺される!?
ボクは逃げようとしたが体が固まって言うことを聞かない。
だが、女は包丁を自分の部屋の中に向けて
「ねぇ、ちょっと、来て、見て」という。
ドアからまっすぐ狭い室内がすべて見える。
旦那らしき男の姿も、泣いてるはずの赤子もいない。
せんべい布団が敷いてるだけの殺風景な部屋だ。
言われるまま、ボクはおどおどしながら女の部屋に入った。


























Manaです。ずいぶん前に書いた「アパートの赤子」というショート作品を、加筆修正して再度アップしました。
実は前回とは大幅に内容を入れ替え、まったく違う話になっていますので、加筆修正というよりはほぼ新作です。まぁ胸クソ系かもしれません。
自分、よく言われるんです。泣ける話から胸糞な話、名作からゴミみたいな話まで「振り幅」が大きいと。まぁでも、おもしろいでしょ?感動系かなぁと油断して読んでたら突然胸糞だったり、胸糞かなぁとおもってドキドキしてたらすごい感動系で泣けたとか。最後まで油断できないでしょw
作者は二重人格なんだと思ってください(笑)