夜の峠道を、M氏は少し悲しい気持ちになりながらクルマを走らせていた。
ちょっとしたトラブルに見舞われて、思いのほか時間を取られたせいで、
辺りはもう暗くなっていた。
しかも追い打ちをかけるように、薄っすらと霧まで立ち込めてきている。
「あぁ・・・夜の峠道ってだけで怖いのに・・・」
早くこの場を抜け出したい、とは思うものの・・・深い山の暗さと霧が、
M氏のクルマからスピードを奪っていった。
そんなM氏の目の前に、青白い光がぼんやりと浮かび上がっているのが見えた。
それは無人の自販機コーナー・・・。
自販機だけが立ち並ぶ憩いの場、それが霧の中、ぽつんとたたずんでいたのだ。
暗い夜道の自販機は、それだけで少しホッとする。
M氏もここでちょっと休憩を取ることにした。
お腹も少し減っている。何か食べ物でもあれば・・・
そう思って自販機コーナーの横にクルマを停めた。
何台も立ち並ぶ自販機を風雨から守るため、また中で人が飲食できるように、
自販機コーナーはプレハブ小屋に収まっていた。
蛍光灯の光に吸い寄せられて来た蛾を小屋の中に入れないよう、
静かに慎重にアルミの引き戸を開けて中に入った。
意外だったのは、誰もいないと思っていた小屋の中に、ひとり先客がいたことだ。
小屋の外には他のクルマは停まっていない。
(はて・・・地元の人だろうか。歩いて来たんだよな?)
そう思いつつ、じろじろ見るのも失礼なので軽く挨拶をして一瞥した後、
立ち並ぶ自販機の方に視線を移した。
よかった。食べ物がある。
きつね・・・うどん。
たぬき・・・そば。
ひもかわ・・・うどん。・・・これは地元特産品の幅広うどんだ。
ラーメンもある。
唐揚げラーメンに、チャーシュー麺。
(アタリの場合は煮卵、ハズレはうずらの卵が付く・・・か。おもしろい)



























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