ひどい・・・隣室、つまりボクとつながっている方の壁がひどく傷つけられている。
傷だらけというか、一部は剥がれ落ち、へこみ、穴が開きそうになっている。
女はそれを指さし、
「・・・赤ちゃんの泣き声・・・するんです」
そう言った。
えっ? 戸惑って、一瞬思考停止してしまった。
シーンと静まり返る部屋に、突然赤ちゃんの泣き声が響き渡る。
自分の部屋よりもはるかに大きく聞こえる。
そして確かに壁側から泣き声がする。
だが隣は自分の部屋だ。赤子なんているわけがない。
壁に近づいて泣き声の位置を探ってみるが、明らかに壁の中から泣き声がする。
そんなバカな、と思いつつ、女と目が合った。
目が合った女はコクリとうなずいて、持っていた包丁を壁に突き刺し始めた。
ガッ、ガッ、ガッと壁が削れていく。
そうだ、どうせこのアパートは3年後には解体してしまうのだ。
壁に穴を開けたところで弁償する必要もない。穴は後でふさげば良いだろう。
だからボクも自室からマイナスドライバーを持ってきて一緒に壁を掘ることにした。
ガッガッガ、ガリガリガリと壁を壊していく。
やがて壁に穴が開くと、赤ちゃんの泣き声はより大きく響き渡った。
壁を一気にはがして現れたそれは、血まみれで、まさに今生まれてきましたと言わんばかりの新生児だった。
どうしてこんなものがここに・・・いったい何日ここにいたんだ・・・どこから??
ボクは頭の中が真っ白になった。激しく鼓動する心臓。
ど、どうすれば・・・
そう思っていると、何を考えたのか、女が突然壁の中に手を突っ込んで、
赤ちゃんを引きずり出した。
片手に乗るほど小さな赤ん坊が、まるでサイレンのように泣いている。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
女は気が狂ったかのようにそれをもったまま、共同トイレへ走った。
な、なにをするんだ!?



























Manaです。ずいぶん前に書いた「アパートの赤子」というショート作品を、加筆修正して再度アップしました。
実は前回とは大幅に内容を入れ替え、まったく違う話になっていますので、加筆修正というよりはほぼ新作です。まぁ胸クソ系かもしれません。
自分、よく言われるんです。泣ける話から胸糞な話、名作からゴミみたいな話まで「振り幅」が大きいと。まぁでも、おもしろいでしょ?感動系かなぁと油断して読んでたら突然胸糞だったり、胸糞かなぁとおもってドキドキしてたらすごい感動系で泣けたとか。最後まで油断できないでしょw
作者は二重人格なんだと思ってください(笑)