その顔には目がなく、裂けた口だけが三日月のように笑っていました。
なんとか街まで戻り、24時間営業のファミレスに逃げ込みました。
明るい店内に安堵し、震える手でコーヒーを飲んでいた時です。
不意に、カズがテーブルの下で自分の膝を「カタン、カタン」と叩き始めました。
「おい、カズ……やめろよ。縁起悪い」
私が注意すると、カズはゆっくりと顔をこちらへ向けました。
その表情は、血の通った人間とは思えないほど無機質で、底知れぬおぞましさを感じさせました。
カズの目からはいつの間にか白目が消え、どろりと濁った真っ黒な闇に変わっています。
彼はあの、録音のような声でこう囁きました。
「……お前だけ、リズムが、合ってないぞ」
気がつくと、店内にいた他の客も、店員も、全員が動きを止め、こちらをじっと見つめていました。
全員が、カズと同じ無機質な顔で。
そして一斉に、自分の肘をテーブルに「カタン、カタン」と叩きつけ始めたのです。
私は椅子を蹴立てて店を飛び出しました。
それ以来、カズを含めた友人3人とは連絡が取れていません。
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不条理な怖さと不穏さを感じさせるラスト、短いお話なのに見事に纏められていて面白かったです。