木こり、小屋、肉、地下
偶然にしては、あまりにも一致しすぎていた。
「……で、その男は、なんでそんなに怯えてたんですか?」
亮介が震える声で尋ねると、管理人はしばらく黙ったまま、重く息を吐いた。
「それがな……何を聞いても、もう喋らなかったんだ。
ただ、“あの斧が来る……あの斧が来る……”って、そればかり繰り返してな。」
俺たちは息を呑んだ。
管理人は続けた。
「それで場所を聞き出して、当時の警察が捜索に入った。
数日後――“小屋”は本当に見つかったそうだ。」
「山の奥深く、地図にも載ってねぇような場所にな。
木々の陰に隠れるようにして、ひっそりと建ってたらしい……」
「警察が小屋に突入した時、最初に見たのは……台所だったそうだ。」
管理人は声を落とし、まるで昔話を語るように静かに続けた。
「そこは、まるで地獄だったらしい。
床も壁も、血まみれ。乾いた血がこびりついて、鉄の匂いが鼻を突いたそうだ。
テーブルの上には“血のついた斧”が置かれていてな……まだぬめっとしてたって話だ。」
俺も亮介も、息をするのを忘れていた。
「さらに地下を調べた捜査員が……人間の“肉”を見つけた。
切り分けられた腕や脚、内臓……瓶に漬けて保存してあったらしい。」
管理人は顔をしかめた。
「どうやら、そいつは獲物を仕留めて、肉を調理して食ってた。
人間をな。」
部屋の空気が、急に冷たくなった気がした。
「それでな……」
管理人は、深く息を吐いた。
「調査の結果、行方不明になってた人たちの“遺品”が、あの小屋の中からいくつも見つかったそうだ。財布、靴、時計……中には子どものものまであった。」
俺と亮介は、言葉を失っていた。
「警察は結論を出した――あの小屋に住んでいた“木こり”ってのは、人を殺して、その肉を調理して食っていた殺人鬼だとな。」
管理人の声が、静かに震えていた。
























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