奇々怪々 お知らせ

ヒトコワ

よなかさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

最後の「ごめんなさい」
短編 2025/10/30 06:14 2,133view

その日、帰宅して制服を脱いだら、ポケットから汚れたハンカチが出てきた。
血が乾いて、黒くなっている部分がある。
でも、このハンカチ……見覚えがない。

その夜の夢は、もっとはっきりしていた。

白い廊下の先に、誰かが倒れている。
制服のスカート。黒い髪。動かない。
夢の俺は、そのそばに跪いている。
手には、あのハンカチを握りしめて。

叫んでいる。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」

夢なのに、耳の奥が痛かった。
起きたあとも、頭のどこかで声が続いていた。

——ごめんなさい。
——ごめん。
——ごめんて。
——ほんとに……ごめんなさい。

翌日、学校の近くの横断歩道を歩いていたら、急にめまいがした。
足元が揺れて、地面が遠ざかる感覚。
目を閉じた、その瞬間。

耳の奥で、知らない女の泣き声がした。

「……ちゃんと言ってよ」

振り向くと、誰もいない。
道の真ん中で立ち止まっていた。

怖かった。
すべてを思い出さないといけないような、でも、思い出したら戻れないような……

部屋に帰り、ポケットのハンカチを握った。
きゅっと指に食い込むほど握って、目を閉じた。

白い廊下。
血の匂い。
倒れている女の子。
泣きじゃくる俺。
その口が、はっきり動く。

2/3
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。