「ごめんなさい。僕がやりました。僕が、あなたを……」
そこで夢が切れた。
気づいたら、俺は泣いていた。
涙で呼吸が乱れていたのに、まるで他人事みたいに冷静な自分がいた。
じゃあ、あの子は?
俺は、謝って済むことをしたのか?
スマホが震えた。
知らない番号だった。
通話を取ると、ノイズ混じりの女の声が言った。
「……最後まで謝って、ね?」
通話は突然切れた。
画面には発信履歴が残っていない。
俺は、まだ何も思い出していない。
けれど、聞こえる。
——ごめんなさい。
——まだ、足りないよ。
——もっとちゃんと。
——言わなきゃ。
ハンカチを握る手が震えている。
指に、古い血が乾いた感触が残る。
今夜もまた、夢を見るのだろう。
白い廊下で、俺は泣くだろう。
そしてきっと、こう言う。
「ごめんなさい。僕がやりました。あの時、僕があなたを……」
最後まで言ったら、何が起きるんだろう。
まだ——言っていない。
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