明日、店長に聞こう。そう思い、翌日、俺は大学をサボってまだ開業前のカフェへ向かった。
店長に直接、直談判するためだ。
扉を開けると、店内では店長が開業準備をしている。
「おはようございます、店長」
「おや、何の用だい?」と店長が顔を上げる。
俺は息を整え、声を少し震わせながら訊ねた。
「店長、◯◯さんが亡くなったのって……バチさんと関係あるのではないですか?」
店長は一瞬、手を止めて硬直したように動きを止めた。
その目には、一瞬だけ恐怖と困惑が混ざった影が走る。
「……そ、そんなことは……」と、声を少し詰まらせながら答えるが、その口調はどこか落ち着かない。
俺は店長に目を向け、声を震わせながら問いかけた。
「店長、教えてください。〇〇さんが亡くなったのは、バチさんのせいなんですか?
数日前、〇〇さんはバチさんに丁寧に接客せず、彼を罵倒して追い出しましたよね……
そしてバチさんは、そんな〇〇さんに『バチが当たる』と、宣言していたんです……」
店長は一瞬、言葉に詰まったように黙り込む。
目を伏せ、深く息をついたあと、ゆっくりと口を開く。
「……ああ、そういうことだ。〇〇君は……あのとき、自分で自分の身を危険に晒したんだ。」
言葉に含まれる重みと、微かに震える店長の声に、俺は背筋が凍る思いだった。
店長は語り始めた。
「私がこのカフェを始めて数年が経った頃のことです。最初に現れたとき、バチさんはどう見てもホームレスにしか見えなかった。小汚い服、伸び放題の髭、古びた帽子。しかし、私は『お客様を差別しない』と心に決めていた。だから、普通に接客をしたんです。」
帰り際、バチさんはにやりと笑い、こう言った。
「あんたぁ…いい人だなぁ……あんたぁは、今後バチ当たりませんよぉ…」
その言葉は妙に耳に残った。
それ以来、バチさんは毎日のように店に通うようになったという。
ある日、別のお客がバチさんを見て「汚い」「臭い」と罵声を浴びせた。必死に止めたが、バチさんは不気味に笑い、こう告げた。
「あなたぉ……バチ当たりますよぉぉ」
そして数日後、ニュースでその客が自殺したと報じられた。
さらに数ヶ月後、新しく雇ったアルバイトが、私の目を盗んでバチさんを追い出してしまった。
その夜からアルバイトの様子がおかしくなり、数日後には遺体で発見された。
その時、私は考えた。
「お客様も、アルバイトも……共通している。死ぬ前に“あの男”を怒らせている」
























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