その瞬間、背筋に冷たいものが走った。
「あの人が…あの人が…バチさんが…」
新人はぶつぶつとそう呟き続けていると
「ああああああ!!!!!」
突然発狂したように叫んだ。
「えっ、おい!ちょっと待て!」と声をかけるが、新人は俺の呼びかけも無視し、頭を抱えながら店の扉を乱暴に開けて飛び出していった。
店内に残ったのは、コーヒーの香りと古い時計の針の音だけ。
俺はその光景に唖然としながら、背筋に嫌な汗がじわりと滲むのを感じていた。
バチさんが……新人に、何をしたんだ?
すると店長が「何だどうした!?」と裏から出てくる。どうやら新人の叫び声が聞こえて出てきたようだ。
俺は新人のことを話すと店長は顔を真っ青にし、ゆっくりと息を吐いた。
「あぁ…その様子だと、もうすぐで……手遅れになるかもしれないな」
俺はその言葉に背筋が凍る。
どういう意味だ、と問いかけようとするも、言葉が喉に詰まったまま出てこない。
店長の目には、ただ事ではない、圧倒的な緊張と恐怖が浮かんでいた。
その数日後。たまたまカフェが休みで、俺は暇つぶしにスマホで動画を見ていた。
すると、着信がある。店長からだった。
電話に出ると、店長の声はいつもより落ち着かず、少し震えていた。
「……スマホで、新人君の名前を調べてみてくれ……」
指示に従い、俺は恐る恐る検索窓に名前を入力する。
画面に表示されたのは、交通事故のニュース。
そしてそこには、新人の名前とともに「死亡」の文字が……。
俺は驚き、さらに詳しく調べてみると、目撃者の証言が出てきた。
どうやら新人は、叫び声を上げながら全力で走り、道路へ飛び出したという。
車のブレーキ音と悲鳴、そして衝突の瞬間までが証言に書かれていた。
その直後、新人は命を落としたらしい
こ、これってどういうことだ……と頭を抱えながらも、ふとあることが頭に浮かんだ。
あの人、バチさんだ。
新人が恐怖に駆られた末に命を落としたことも、あのとき店長が青ざめた理由も、すべてつながる気がした。
バチさん。あの男には、何か尋常ではない力があるのかもしれない。























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