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ヒトコワ

しゃくたんさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

午前三時の洗濯物
短編 2025/09/19 10:48 1,826view

また聞こえてきた、大家さんの、娘を案じるような優しい声。

そして、その後に続く、重く、引きずるような足音。

僕は、もしかしたらあの音は、大家さんの足音だったのかもしれない、と考えた。大家さんは、一階で何か作業をしている。しかし、なぜ?

すると、僕の目には、信じられない光景が映った。

大家さんは、部屋の中央で、大きなドラム缶をかき混ぜていた。

「あら、本当に、この子ったら……」

そして、ドラム缶から、何かを引きずり出した。

その動作は、まるで、子供の汚れた服を洗っている母親のようだった。

「これで、きれいになるわ……」

「あら……」

大家さんが、こちらに顔を向けた。

僕は慌てて部屋に戻り、鍵をかけた。

あのダンボールの中の服は、いったい、どこで、どうやって汚されたのか。

そして、あの泥水のような液体は、いったい何なのか。

そして、また、大家さんの声が聞こえてきた。

「あら、この子ったら……」

今度は、僕の部屋のドアの前から、その声が聞こえてきた。

「また、汚して……」

僕の背後から、冷たい何かが、ゆっくりと迫ってくる気配がした。

僕は、背後の気配から逃れるように、体を丸めた。

そして、僕は、自分の部屋の隅に置かれた、もう一つのダンボール箱を見つけた。

その箱には、泥まみれの、古びた、子供の服が、詰め込まれていた。

僕は、その箱から、小さな写真を見つけた。

写真には、大家さんと、幼い女の子が、写っていた。

その女の子は、写真の中で、泥まみれの服を着て、笑顔を浮かべていた。

「ガタン……ガタン……」

重く、引きずるような足音が、部屋のドアの向こうから聞こえてきた。

僕は、ただひたすらに、神に祈るしかなかった。

「おかあさん、あたしの、よごれたふく、きれいに、してくれた?」

ドアの向こうから聞こえてくる、大家さんの声が、徐々に、幼い女の子の声に変わっていく。

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