「じゃあ、買ってください」
そう言って、テーブルの内側に回り込み、雑に写真を束ねてからしわくちゃの封筒に投げ込んで、俺に手渡す。
「四千円です」
全部で何枚あるのか数えてないけど、多分十枚はなかったはずだ。それで四千円……一枚当たり四百円くらいか。
それが高いのか安いのかも分からないけど、とりあえず俺は財布から五千円札を出して、女に渡す。
すると、面倒そうに嘆息し、自分の財布からしわくちゃの千円札を出して渡してくる。
ありがとうございましたなんてセリフは当然の様に聞くことはなく、パイプ椅子に座った女は、既に用無しだと言わんばかりに俺から視線を外し、ボーッと天井を見ていた。
一瞬、写真のことを訊こうかなとも考えたけど、相手にしてもらえるとは到底思えない。恐らく話し掛けても無視されるだけだろう。
俺は無言でその場を去って、トラックに戻った。
運転席に座るとすぐに煙草に火を点け、思いっきり煙を肺へと吸い込んだ。
俺は膝の上に置いた封筒を見下ろしながら、ドクンドクンと煩さすぎる心臓に舌打ちをして、まだ半分くらいしか吸ってない煙草を消す。
正直、見るのが恐ろしい。
俺はグロテスクな画像や映像が苦手で、ブラクラなんて子供みたいに悲鳴を上げてしまうくらい臆病なので、ネットでも極力怪しいリンクは踏まない様に避けている。
でも、恐らくこの写真は、そんな生易しいものじゃないのは確実だ。これ以上見るべきではないと分かっている。
分かっているが。
「……」
怖怖とした手付きで、時限爆弾でも触るかのように慎重に写真を取り出す。
あんなに雑な感じで入れてたのに、一枚目と思しき写真が一番上になっていた。
俺は一枚一枚、さっき見たばかりの悍ましい写真を確認しては助手席に置いていく。
そして、六枚目。顔のパーツはひとつもない男が映っている。
あまりにも惨たらしい写真だ。
しかし、これよりも確実に惨いであろうものがあるのだ。
七枚目。
意を決し、俺は写真を凝視する。
「うわっ!」
背景は、どこにでもある普通の家っぽい感じで、リビングというより居間という感じの和室だった。
畳が敷き詰められ、家具らしいのは木製のテーブルとブラウン管テレビくらいだ。
その隣に並んで座っている二人の男女。
女は相変わらず無表情。
男は――耳、目、鼻と、顔を切り刻まれた男は、脳みそを剥き出しにしている。


























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