どうやって切られたのかは分からないけど、頭の右側だけ、斜めに皮膚がなくなっている男は血塗れの脳みそを晒し、口元は歪んだ笑みを浮かべている。
何が何だか分からない。
けれど、もう一枚、八枚目の写真が重なっていることに気付く。
俺は躊躇わずにそれを確認した。
もう、男はいなかった。
いや、いると言えるのかもしれない。
無表情な女の両手で抱えられていたからだ。
男の頭が。
胴体はどこにもない。
ただ、頭部だけが、そこに――女の腕の中にあるのだ。
胃液が込み上げてくるのを必死に我慢し、なんとか吐き気を堪える。
そして、八枚目と背中合わせのようになっていた九枚目。裏になっていた九枚目を、俺は静かに捲った。
「っっっ!!」
息を呑む。舌ベロを呑み込んだような、声にならない声を出して、俺は写真を放り投げる。
その写真には、女がひとりで写っていた。
両目を見開いたまま、満面の笑みで。
そして、フロントガラス越しに、そいつが立っていることに気付く。
写真と同じ表情で。
笑いながら、ゆっくりと近付いてくる。
俺はほとんど無意識に車のエンジンをかけ、アクセルを思い切り踏み込んだ。
防衛本能みたいなものだったのかもしれない。
やらなければ、やられてしまう。
そんな風に感じたのかもしれない。
俺はそいつに向かって全速力の車で突っ込んでいく。
轢いた感触はなかった。
いや、あまりにもスピードを出し過ぎて、跳ね飛ばした感触がなかっただけなのかもしれない。
そして、数秒後には、俺の目の前にコンクリートの壁があった。
メーターは百キロを超えている。
俺はアクセルから足を外せないまま、壁に衝突する直前、あの女の笑顔に恐怖しながらも、これで二度とあいつに会わなくて済むんだなっていう安心感が芽生えていた。

























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