僕は椅子に座っているのだけれど、叔父さんは地べたに膝を付いて正座みたいな感じで座っている。
後ろ手に縛られて、更にアイマスクをしていて、もう何も言葉を発していない。
ピクリとも動かない叔父さんは、きっと反撃のタイミングを測っているんだろうなと僕は察する。
初めて叔父さんの活躍を目の当たりにすることになる興奮を抑えながら、僕は周囲を伺う。
そこには太った男と痩せた男がいた。
覆面とかサングラスで顔を隠しているわけじゃなくて、多分30歳くらいの、なんだか悪そうな2人組が僕達を攫った犯人らしい。
2人はボソボソなにかを話し合っていたけれど、痩せてる方の男が叔父さんに近づく。
「おいクソブタ。お前これから自分がどうなるかわかってるよな?」
叔父さんのお腹の肉をギュッと強く掴んで、ニヤニヤしながらそう言った。
ビクンと身体を震わせた叔父さんは「……助けてください」って頭を下げる。
「助けてやらねーよ」
「お願いします! 絶対警察には言いませんから!」
「いいよ。どうせもう何も言えなくならから」
痩せた男は叔父さんのお腹に蹴りを入れる。
ぐえ、おえって叔父さんは嘔吐くけど、男はやめない。
「ごめんなさい! すいません! 痛い! やめて!」っていう叔父さんの叫びは全部無視されてしまい、14回目でようやく男は蹴るのをやめる。
アイマスクはとっくにずれていて、叔父さんの真っ赤に充血した目からたくさんの涙がこぼれるのを、2メートルくらい離れたところで僕は見ていた。
「もう命乞いはおしまいか?」って言って、うずくまるおじさんの頭を踏みつけてから、痩せた男はもう1人の太った男に「もう殺しちまうか」と言う。
僕は「来た!」と思った。
反撃するならきっと今なんだろうなと気付いたから。
叔父さんはいつも言ってた。「真のヒーローは追い詰められた時に本領を発揮するようにできてる」って。
多分、ここしかない。素人の僕だってわかるんだから、プロの叔父さんなら当然このタイミングを狙ってたはず。
でも、僕はここでミスをしてしまう。
この日は早起きしていたから、眠くなってしまったんだ。
大きな口を開けてあくびをしてしまった僕を、痩せた男はキッときつい目で睨んだ。
「余裕だなクソガキ。おめーから殺してやろうか?」
言いながら僕に一歩だけ近づいた痩せた男は、それ以上足が前に出なくなる。
反対の足は、叔父さんが両腕でがっしりと捕まえていたから。
「やめろ……やめろ……」
おでこが切れていて、そこからの血が片目に入ったらしい叔父さんは、もう片方の目だけを開けて、痩せた男を睨むように見上げながら「やめろ」ってもう一度言った。


























子供がアニメについて知らないというのはずいぶん不自然な気がする。
誘拐されたことがあるのに、親がろくに警戒もしていないのがおかしい。
不思議なお話でした(○’ω’○)
アニメを見ていない子が何からヒーローについて知るのだろうか?一度、誘拐されたことのある子を親がほっておくのはなぜだろうか?誘拐された経験のある子が、なぜ誘拐犯を無駄に刺激することをするのだろうか?
おじさんかっけぇ✨️