友人はこう話した。
「このトンネルはおかしい」
「風が異様に強いから」
「あと⋯音が響かなすぎるんだよ」
正直何を言っているのかわからず、問いかけてみた。
【風が異様に強い】これは、300mはある、内で2度も曲がったトンネルの先から来る風が異様に強いことを指摘していた。確かに、「ひゅう」ではなく、「びゅう」以上の風が度々吹いてきていて、そこに少し違和感は感じていた。
そして、【音か響かなすぎる】とは、そのとおり声などの音が全然響かないことを指摘していた。
このトンネルは入ってすぐの時は足音がよく聞こえ、声も少しは通っていたが、進むにつれてその音は小さくなっていった。1度トンネルを出た私達は再度この事実を確認してみたが、友人の主張は正しかったようで、トンネルが異常なことが長休みで冷静さを欠いた私にもよくわかった。
たちまち怖くなって帰りたくなった。私は友人に帰りたいと訴えたが、友人はそうもいかないようだ。
『変な違和感はスッキリさせたい』そんな性格なので友人の成績は学校でも常にトップにあった。
今回ばかりは洒落にならない。そう考えた私は友人に幾度と訴えかけたが、友人はもはや聞く耳を持たず、私を置いて1つ目の曲がり角を曲がっていく。トンネルでも右側通行のスタイルは素晴らしい。そして徐々に、ライトで照らすその姿が段々と暗くなっていく。
怖くなった私は走って友人を追いかけた。
1つ目の曲がり角を曲がってすぐだった。
「何もないな」
突然友人が立ち止まったので、後ろに密着してついて行っていた私は思わず友人と体当たりしてしまう。
「いってーな」
「⋯」
「え」
友人の様子がおかしくなった。
友人のライトが遠くの、2つ目の曲がり角辺りを指す。
突然のホラー的な動きに私は思わず友人に抱きついてしまった。
その手はすぐ振りほどかれてしまったが、その時私も友人の見る目の先を見て声が出なかった。
がたん、かたっ
ころ、ころん…
話しかける勇気も出ない。
というのも、ライトで照らす先にはトンネルの左側には、真っ暗で明かりなしには何も見えないようなトンネルの中で、3人、古びた作業服らしき服を着た人達がツルハシでトンネルの壁を掘っていた。
暗くて顔と手元は見えなかったが、50代から60代の男性の体つきをしていた。
どうやら、その中の1人が掘っている場所にはもう、少し穴があいているらしい。
少しだけ陽の光が指し、その人達の周辺をうすく照らしていた。そこから外の風がビュウビュウと吹いていた。
ただただ無言だった。
私と友人も、また作業員の人達も。
ふと友人の顔を除くと、額には汗をかいていた。
この状況だ、恐怖するのも無理はない。私も泣きそうになっていた。
と突然、あいていた穴が広くなる。段々とそれは大きくなり、周辺を崩壊させていく。
ガラガラ
ズズン..
























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