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不思議体験

どこかで見た話さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

最後の取材ノート
短編 2025/08/02 18:32 2,274view

――語り手:ノンフィクション作家・西山 望(仮名)
「死者のことを書くと、死人が寄ってくるよ」

これは、私がかつて取材中に耳にした言葉だ。
ある老人が、ぽつりと、夕暮れの寺でそう呟いた。
当時は聞き流したが――今なら、わかる。

私はこの原稿を、間に合うかどうかわからないタイミングで書いている。
いや、「私」ではないかもしれない。
何を書いても、あなたが読む頃には、もう私は存在していないのだから。

その村の名前は伏せる。

某県某郡、過疎の進んだ山間部の集落だ。ダム建設で水没した、とされている。

取材の発端は奇妙な投書だった。編集部に届いた茶封筒には、黄色く変色した新聞の切り抜きと、ボールペンで走り書きされたメモが一枚。

「ここでは、“自分の遺体”を見た者が死ぬといいます」

切り抜きは1977年の日付の地方紙。「林道脇で白骨死体 自殺か」という見出しと、地図のようなもの。
だが、よく見ると、地図の“川”に水色のペンで「×」が書かれている。
下には小さく、「逆」とある。

私はこの投書をきっかけに、その村――仮に「逆村(さかむら)」と呼ぶ――を訪れることにした。

現地には、旧住民らしき老人が数名だけ戻ってきていた。

最初に会ったのは、元区長の岩淵氏。

応対こそ丁寧だったが、件の新聞記事について尋ねると、明らかに話を逸らされた。

「遺体? ああ、ダム工事で骨も出たかもしれんがね、あれは……鹿とか、猪とか、そういうもんだよ」

しかし、取材を続けるうちに、別の老人がぽつりとこんなことを言った。

「“川を逆に流れた者”が、戻ってきたんだよ。死んだ自分を見たんだろうなあ、あれは」

意味不明だった。

だが、件の“逆”という文字。川に書かれた「×」の意味。
これは単なる方角の誤記ではないのでは――?

そしてある夜、私は村の神社跡地で奇妙な「木札」を見つける。

それは朽ちかけた鳥居の根元に打ち捨てられており、こう書かれていた。

「●年●月●日 ○○○○、自分の遺体を見る 禁」

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