日付と名前は判別できなかった。だが、取材ノートにははっきりと書き留めた。
夜、民宿代わりの旧民家で、不可解な夢を見た。
廊下を歩いている。
自分の足音が妙に重い。
何度曲がっても、同じ部屋に戻ってきてしまう。
窓の外は、川――だが、そこを“自分自身の遺体”が流れていく。
顔は見えない。
水の中なのに、目だけが、真上を向いているのがわかる。
翌朝、私は気づく。
昨晩、夢で歩いた廊下の“折れ”が、記憶より一本多い。
念のためにとメジャーを持って測ると、建物の“外寸”と“内寸”が合わない。
家のどこかに、“余分な部屋”があるのだ。
私はその後も何日か調査を続けた。
そして、古い町役場の倉庫から、もう一つの新聞記事のコピーを発見する。
「村の少年、川で水死。身元不明の遺体を見た夜に――」
日付は1977年。例の切り抜きと同じだ。
だがこの事件は、今までどの村人も一切話さなかった。
私は不安を覚え、例の「夢で見た川辺」へ行ってみた。
するとそこには、朽ちた祠と、苔むした石碑。
碑文の一部が読めた。
「……己の死体を視(み)たる者、七日以内に連れ戻されん――」
その瞬間だった。
視界の隅で、何かが動いた。
水面に、何かが揺れていた。
よく見ると、それは……
「私」だった。
このあと、記憶が途切れる。
気づいた時、私は自宅に戻っていた。
だが、取材ノートには「逆さ文字」で走り書きがあった。
「7にち すぎたら ふりかえっては いけない」
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