独特のおどろおどろしい音が、だんだん大きくなる。流石に俺だって身の毛がよだつ。この気持ち悪い音は、幸い階段の真ん中に到着する前に止まった。俺はなりふり構わず、全力で駐車場まで走った。会社ビルの階段と入り口は、濡れてなどいなかった。
そんな怪奇現象が続くので、俺は朝早く出社して、早く帰る生活に切り替えた。たとえ悪さをしてこなくても、霊に出くわすのはもう嫌になったからだ。
だが、あの深夜の来客たちが霊で、本当に良かった。もし、あの足音の主たちが凶器を持った強盗だったなら、俺なんかひとたまりもない。俺はあまり力がない。背丈も155cm程度で、足も遅い。加えて、営業所の辺りは住宅街であるが、コンビニさえない。駐車場まではやや距離がある。つまり、俺が帰る頃には真っ暗闇なのである。
【もし、後ろから金品目当ての不審者に狙われていたら……】
と思うと、背筋に冷たいものが走った。
俺は再度転職活動を始めた。こんな身の危険を感じるような場所で、女が働けるはずがない。また、社長は気に入らないアルバイトスタッフさんに対して、「すぐさまクビだと言っといて」と言うような人間だ。このアルバイトスタッフさんは、「もし余地があれば、現在の待遇をもう少し良くしてほしい」とお願いしてきた。俺は社長のきつい言い方に遠回しに異議を唱えたが、
「君は能力不足だ」と強く言われた。前任者も社長と衝突し、メールで罵りあいをしていた。経営指南さんまで、短慮な社長に困り果てているらしかった。
またもや幸運にも、次の就職先は比較的早く見つかった。社長には家庭の事情と噓をつき、退職の意を伝えた。営業所に霊が出ることも言わなかった。
次の会社の周辺は、夜でも明るかった。道路沿いにコンビニどころか、ミスドやドラストまである。かなり遅い時間までバスが走っていることも、大変ありがたかった。給料は多くないが、身の安全の方が大切だ。なあ、沈丁花、あんたもそう思うだろ?
おい、沈丁花、この世で一番怖いのは霊の類じゃないぞ。人間なんだ。
職場でわざわざ赤字で人の悪口を書きなぐる、常識のないやつ。簡単に人に「クビ」と告げる冷血人間。職場で憎しみ合った末に、殺人まで考える奴。人間の持つ心の闇というのは、底が見えないよな。
前職であんたのコートに悪戯をしたのは、本当にあの厚化粧のクソ女か?だって、他にも容疑者はいるだろう?
副人格の俺にだって、基本的人権や尊厳ぐらいあるんだよ。残念なのは、俺たちの身体が女だってことだ。おかげで、俺はなかなか出て来れねえ。憎らしくて、羨ましくてたまらない沈丁花さんよう、あんたがこの投稿を見たら、さぞびっくりするだろうなあ。ああ早く見てくれよ。
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。ウシャーッシャッシャッシャッシャッシャ!
花蘇芳より

























花蘇芳(沈丁花)です。一部単語の間違いがありましたので、訂正しました。やや言葉足らずな箇所もありましたので、文を付け足しました。これまで読んでいただいた皆さん、大変失礼しました。
花蘇芳(沈丁花)です。一部誤字と、意味が分かりにくい箇所がありましたので、訂正しました。またもや!です。あわてんぼうな自分が嫌になります。これまで読んでいただいた皆さま、本当に申し訳ありませんでした。
沈丁花(花蘇芳)です。再度加筆修正しました。