「何かやらかしたら、殴るからね」
社長が久しぶりに俺の営業所に来た時に、こう言った。社長は普段はN市にあるグループ会社で仕事をしている。
(は?たとえ冗談でも、女に殴るなんて普通言うか?会社の中で部下を殴るなんて、警察沙汰になるぞ。社長め、何なんだ?)
俺はタチの悪い冗談だと思って、笑って聞き流した。俺はきちんと新規のお客様もアルバイトスタッフさんも獲得しており、経営指南さんにも褒められているので、この日は社長からも笑顔でねぎらいの言葉を受けた。出だしはまあまあ順調だった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
だが、俺が感じた霊的な意味での嫌な予感は、見事に的中してしまったのだ。
俺が夜遅くまでビルの二階で事務処理をしていると、キィィィッと、ゆっくりと一階の入り口のドアを開けるような高らかな音がした。
………カツーン、………カツーン、………カツーン、………。
しばらくしたら、誰かが高めのヒールの靴を履いて、階段を上ってくるような音が聞こえる。慎重に、そろそろと、何者かが事務室に近づいてくる。時刻は23時だ。まさかこんな夜中に、飛び込みのお客様か?俺は少し怖くなって、ボールペンを握りしめて身構えた。
………カツーン、………カツーン、………カツーン、………カツーン、………。
そいつは相変わらずスローテンポで近づいてきたが、とうとう階段の最上段に到着したようだ。
【いったい誰なんだよっ!】
恐怖のあまり、俺の胸は早鐘を打っている。握っているボールペンは脂まみれだ。俺はこの客が霊であることを切に願った。
案の定、誰も靴箱の前までやって来ない。俺は深呼吸をして、念のためヒアリング用紙を挟んだクリップボードとボールペンを持ち、勢いよく事務室の扉を開けた。
そしたら誰もいなかった。俺は一旦安心したが、気味が悪かったので、その日はすぐに退社した。なんとなくあの足音の主は、背の高い年嵩の男性である気がした。
二回目の怪異は数日後に起こった。
俺が22時半頃まで仕事をしていると、またもや誰かが階段を上ってくる音がするのだ。しかし、前回とは歩く速さと足音が違う。
……ボフッ、……ボフッ、……ボフッ、……ボフッ、……。
足音が前回よりも低音で、鈍かった。前よりも力強く階段を上ってきているように思えた。多分また、霊さんがお越しになったのだろう。
俺はあらかじめ用意しておいた箒を持って、バーンッと事務所の扉を開けた。足音の響きぐあいからして階段の真ん中まで登ってきているように思えたが、やはり誰もいなかった。
三回目は鉄砲雨の日に起きた。
やはり同じぐらいの時間に、不気味で不快な音が始まった。誰かが相当ずぶ濡れのままで、ゆっくりと階段を上ってきているようだ。
………ピチュロンッ、…………ピチュロンッ、…………ピチュロンッ、…………ピチュロンッ、…………。
























花蘇芳(沈丁花)です。一部単語の間違いがありましたので、訂正しました。やや言葉足らずな箇所もありましたので、文を付け足しました。これまで読んでいただいた皆さん、大変失礼しました。
花蘇芳(沈丁花)です。一部誤字と、意味が分かりにくい箇所がありましたので、訂正しました。またもや!です。あわてんぼうな自分が嫌になります。これまで読んでいただいた皆さま、本当に申し訳ありませんでした。
沈丁花(花蘇芳)です。再度加筆修正しました。