60年前のモノクロテレビのニュース番組

俺の家には古い物があるのを売りにしてる家電量販店で買った60年前のモノクロテレビがある。

ただこのテレビ、普通じゃない。

ずっと画面に朝のニュース番組みたいな番組で少し老いた男の司会と美人な女性のゲストが話しているのだ。

しかも、一日ごとに会話の内容や司会とゲストの衣装も変わるという奇妙な現象も起こる。

しかし、俺は、別にそれだけで、大してそれ以外変なことは起こらないから大丈夫だと思った。

そんな中、朝の9時ごろ、俺がそのテレビを見ていると耳を疑うような内容が聞こえてきた。

司会が今日俺の住んでいるビルの誰かが飛び降りたと言ったのだ、そして、その飛び降りた人の特徴を言うのだが、それが完全に俺と一致していて、警察が身元確認をしているという。

だけど、このテレビのニュースの情報が当たったことは一度もなかった為俺はそんなことを聞いてもそんなに気にも留めなかった。

その時だった、

「だ　まされて　るんだよ？だまさ　れてるん　だよ？き　づかないな　んて　ば　かだね？」

という女の笑い声が耳元から聞こえてきた、しかもその女の声はどこかで聞いた覚えのある声だった。

そう、その声は俺が買ったモノクロテレビに映っていたゲストの女の声だった。

そして、そのテレビの画面では女が首を曲げ、笑みを浮かべているところで止まっていて、しかも、その女の首は長くなり、ありえない角度でねじ曲がっていた。

そんなものをみて頭が真っ白になって咄嗟に振り返った俺が見たもの　

それは

ボロボロの服を着て、ボサボサの髪になって、無表情でくちをぽっかり開けたテレビの画面に映ってた様に異様に長い首を傾けたあの女だった。

目の前のその光景に恐怖し、頭がおかしくなった俺は、そいつから逃げようと、俺の近くにあった窓を開けて、そこから飛び降りた。

「緊急ニュースです、今日の午前9時ごろ、Aビルの5階から男が飛び降りて、死亡しました、男の身元は現在警察が確認しています。」