小学生の頃、俺はとある番組が好きだった。
その番組は毎週木曜日の4時くらいに流されていた5分くらいの長さのもので、内容としては狭い小屋のような物に入っている女の人がただひたすら見ている人を睨むという言ってしまえばおかしいものだった。
でも、当時俺はそういう不思議なものが好きだったからかそれが毎週の楽しみになっていた。
それから時が経ち大学生になり一人暮らしをしていた俺は、久々に実家に顔を出すことにした。
家に入り、両親と軽く大学での生活を話した後に、久しぶりに三人で食卓を囲み平和な時間を楽しみ、その後俺は少し実家でゴロゴロしてから帰ることにした。
とは言ったものの実家に娯楽なんてないしスマホのギガもあまり使いたくなかった俺は、小学生の時に見ていたあの番組のことを思い出し、早速テレビの電源をつけ、予約の中にその番組がないか探し始めた。
それから俺は必死に探したかいもあり、何とか一個だけ番組の録画を見つけ出すことができた。
あの頃の自分みたいに楽しむことができるのか、不安と好奇心がグチャグチャに入り混じった状態で俺はリモコンの再生ボタンを押した。
、、、、、、、え?
不意に困惑を声が漏れ出る。
何が何だか分からずに気づいたら口をぽかんと開けていた。
今見ているものが夢なのではないかと俺はそんな疑問に陥った。
今、俺の目の前にあるテレビから再生されている映像、その中にいるあの女の人が明らかに前見た時よりも老けていたのだ。
顔、手のシワの数は増え、髪はボサボサになり、着ていた服はもはやあの時の面影などないに等しい物となっていた。
そんな小学生の時見た人とは明らかに違う女性は俺の存在に気づいたのか、シュッと風を切るような早さで首をこちらに向け、そして画面に近づき、俺に対してこんなことを言ってきた。
「ねえわるかったからぁぁ!もどして!いやぁぁ!たすけてぇぇぇ!たすけてぇぇ!こんなのいやだよおおおおお!このままなんていやだよぉおお!ねえ!ねえ!ねえ!ねえ!ねえ!」
初めて聞いたその女の声はか細く、今にも途切れそうなほど脆く、弱く、情けなかった。
女の叫びに呆気に取られていた俺が何も出来ずに固まっていると、急に画面が暗くなり背後から誰かの気配を感じた、咄嗟に振り返るとそこにいたのは笑顔の母さんだった。
そして、母さんは俺に
「あんな穢らわしくて汚いものはもう見ては駄目だよ。」
と言った。
結局その後は何がともなく帰ることは出来たが、あの番組の謎と母さんが俺に言ったことが今でもよく分からない。
























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