大通りを渡るときに右を見たけど人影はなく、
それ以前に、向こうの路地から大通りへ出ても、横断歩道がないのだから渡れるはずもない。
それでももしかしてと、大通りを渡ってひとつめの路地を横切るときに、勇気を振り絞って右を見てみた。
誰も居なかった。
その後の路地を横切るときも、誰も見えなかった。
当たり前だよなーと落ち着きを取り戻して歩き続け、
この路地を曲がればさぁもうすぐ家だと、いつものところで右へ曲がった。
奥の路地から、白い傘を差した人が出てきた。
え?って思ったときには、白い傘を差した人は路地を曲がってこちらへ歩いてきた。
鳥肌がたった。
やばって思ったときには、もう元きた道を走ってた。
見られないように全力で走って、ひとつ前の路地を曲がった。
なのに、曲がった路地の奥の道から白い傘をさした人が歩いてきた。
道の真ん中まで出てきて、その体勢のまま不自然な感じでグルンッとこちらに向き直って、歩を進めてきた。
寝静まって真っ暗な住宅街のど真ん中で、道が交差する付近には街灯があるものだから、
白い傘と白い服はものすごくはっきり目に映った。
深夜だっていうのに大声が出た。うわぁああ!って感じの。
持ってた傘もコンビニの袋も放り投げて、一目散にその場から走った。
走りながら友人に電話をかけて、寝てるところ起こして、「今から行くから家に入れてくれ」とお願いした。
数時間前に送ったばかりだっていうのに友人はOKしてくれて、助かったと急いで走って向かったのだけれど、
大通りを越えて、コンビニを過ぎ、道路を横断して曲がろうとした先で、
白い傘を差した人が立っているのが見えた。
もうこの時には、何で?としか考えられなくて、曲がるのをやめてそのまま次の路地を目指したんだけど、
そこでも白い傘を差した人が奥の路地から出てきた。
もう嫌だと思いながら道を先に進んでいると、携帯が鳴った。
けれどおかしなことに、着信ではなく不在着信の表示。しかも3件。
時間を確認するともう4時を回っていて、
自分の中での時間はまだ10分程度だと思っていたのに、既に1時間近く経っていた
町から出ていないし、それ以前に、曲がれないからこの通りを抜けていないのに。
住んでるはずの町が知らない町のようで、すごく怖くなった。

























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