これは私が高校2年生の夏休みの前と、浪人時代に本当に体験したことです。不思議体験とヒトコワ両方に関する話ですが、不思議体験のカテゴリーを選択しました。この話も身バレを防ぐために、一部フェイクを入れてあります。
よく晴れた日の17時頃だったと思う。高校2年生の私は静かな離れ家で、一人勉強をしていた。昼間のギラつく陽光も、体に重苦しくのしかかるような暑さも次第に和らぎ、ゆっくりと夕闇が地上に近づいてきていた。窓の外を見てまだ明るいと思いながら、私は問題集を進めていた。
しばらく経つと、私は後ろ頭のちょうど真ん中の髪の毛を引っ張られたように感じた。当時、私の髪は肩までの長さだったと思う。私は後ろを振り返ったが、当然誰もいない。気のせいかと思い、また問題集を解き始めると、再度違う箇所の髪の毛を強く引っ張られた。
私は変な感覚だなあと思いながら頭を左右に振り、もう一度問題集との格闘を再開した。そうしたら、”私の真後ろにいるやつ”は器用にも私の髪の毛の一本をつかみ、後ろにググ~ッと引っ張ってきた。それも髪の毛が抜けるのではないかと思うぐらいの力の強さである。
(こんな明るいうちから出てくるお化けなんて、いるもんか。)
私はそう考え、髪の毛の一本を後ろに強く引っ張られる度に頭を横に振った。だが、だんだんその合間が短くなり、後ろ頭の上方や左横、ついには首の近くの毛まで、後ろにグググ~ッと引っ張られるようになってきた。痛いし、流石に気味が悪い。せっかく勉強をしているのに、迷惑千万である。
私はこの不思議で腹立たしい出来事に我慢できなくなり、勉強道具を持って母屋に逃げることにした。
その時である。私はその”勉強のお邪魔虫”に、確かに左肩を2回たたかれたのだ。痛くはなかったが、まるで生身の人間がするように。私は自分の真後ろにいる”そいつ”に、
『ねえ、気づいているんでしょう?』
と言われた気がした。
私は恐怖のあまり、全身の毛が逆立つのを感じた。私は、
【絶対に母屋に来るなよ!】
と、目に見えぬ”悪たれ”に心の中で怒鳴りつけた。そしてそのまま離れ家を飛び出し、一目散に母屋へと逃げ込んだ。
私は母屋のリビングで、兄弟に”お化け”に左肩をたたかれたことを話した。兄弟はその時、「あんたの気のせいだよ」と笑っていたと思う。夕食後、私は怖いのを我慢して、離れ屋のあの勉強部屋にものを取りに行った。すぐに母屋に戻った為か、おかしなことなど何も起こらなかった。
補記すると、上記の”不可思議な現象”が起こった時、あの離れ屋にいたのは私一人だった。
離れ屋の玄関のドアは、重めの引き戸である。私の実家は中部地方の農家であるが、この離れ屋の玄関は土間仕様になっており、父方の祖父の小さめの農機、草刈り機や小道具、米を保管するための冷蔵庫などが置いてある。
土間の奥には開閉式のドアがあり、その奥には渡り廊下と二つの勉強部屋がある。私が使用していたのは、広いほうの勉強部屋である。勿論、この二つの勉強部屋にも引き戸が設けられている。要は、家族の誰かが入って来たら、ドアの音ですぐに分かるのだ。
さらに補足をすると、この離れ屋はもともとは農業小屋であり、私の父方の高祖父が建てたものと思われる。私が小さい頃に改築をし、物置兼勉強部屋になったのだ。
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それから2年余りが立ち、一浪中の私は母屋のあの部屋でセンター試験の対策に追われていた。
流石は”目に見えぬもの”が棲まう部屋である。16時頃になると、毎日のようにまた違った”不思議な出来事”が起こるようになってきたのである。例えば、勉強の最中に頻繁に頭上から文房具が降ってきたり、A3サイズのテキストやノートがひとりでに机から落ちたりするのである。私がうっかりものを落としただけではないかと、皆さんは思われるかもしれないが、当時私はかなり大きめの勉強机を使っており、決して不注意でものを落としたのではない。センター試験や私大入試やらを控えているのに、しょっちゅうこんなポルターガイスト現象が起こるのでは、いくら何でも気が散るし、腹が立つ。私は目に見えぬ”それ”に向かって、心の中で抗議した。
【いい加減にしろ、人間だって人生がかかってるんだよ!あんたなんか、朝には出てこれないくせに!】

























沈丁花です。一部脱字と誤字がありましたので、訂正しました。これまで読んでいただいた皆様、本当申し訳ありませんでした。
沈丁花です。上記のコメントにまたもや脱字がありました。「本当」ではなく、「本当に」が正しいです。重ね重ね、申し訳ありませんでした。