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不思議体験

沈丁花さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

血筋の証明(副題:血筋の共鳴)
長編 2025/06/21 10:02 3,599view

 
私は祖母の言うことにとても驚いたが、再び問いかけた。
「でもAちゃんからちょい離れたところを、ピンク色のワンピースを着た女の子が歩い取るやん。5~6歳のさあ。」
祖母はやはり同じ言葉を返してきた。
「Aちゃんしかおらんというとるやん。」
どうやら祖母には、あの小さな女の子が見えていないのだ。夕方になっても熱いから、私は幻でも見たのかと思うことにした。

 墓標の間隣ならあまり風が当たらない。祖母は丸めた新聞紙に火をつけて、お線香を焚こうとしていた。とにかく私にとっては、その日の墓参りはとても長いものに感じられた。

 ―ジリジリジリジリ、ジ、ジ、ジ、ジ―
 ―ツクツクホォーシ、ツクツクホォーシ―

 青天井がくすみ、青灰色になってきても、蝉はまだ唄っている。生暖かい風が私の肌を撫でる。紙とインクの焼ける臭いが、私の嗅覚を刺激する。線香の青臭い香りが、それに混じる。

 私はもう一度、後ろを振り返った。Aちゃんは既に犬と一緒にT字路を左に曲がり、用水路沿いの道を歩いていた。そして、Aちゃんから少し離れたところを、あのワンピースを着た小さな女の子が歩いているのをやはり見た。
「なあ、おばあちゃん。やっぱりAちゃんの後ろを小さい女の子が歩いとるで。」
と、私は祖母にあきらめ半分で問いかけをした。
「あんたの目に映っとるだけよ。私にはそんな子、見えんわ。」

と、祖母は予想通りの言葉を返してくれた。

 墓地を出る際にまたAちゃんの方を見ると、相変わらずあの女の子が彼女の背後を歩いている。しかし、明らかに変だと思ったことがある。Aちゃんは家からやや離れたところを、犬と小走りしていた。あのワンピースの女の子はどの道を通って、Aちゃんの後ろまで追いついたのだろう。
 前述のとおり、この墓地は田畑に囲まれている。道は狭い直線になっているので、この墓地にいたら、誰がどの道を走ってきたかすぐに分かる。
 また、あの女の子はノースリーブの無地のピンク色のワンピースを着ていたが、遠くから見ても、その色がとてもくすんで見えた。余所行きの服にするには、色がくすみ過ぎていると言ってもいい。
 加えて、幼稚園の年長さんくらいの子供が、5年生のAちゃんの歩く速さに追いつけるはずがない。その女の子はAちゃんから少し離れたところを歩いていたが、いつ見ても、Aちゃんとの距離がまるで変わっていないように見えた・・・・・・。

 私は家に帰った後、兄弟にその小さな女の子の話をした。そしたら兄弟は、
「おばあちゃんはよその家から嫁いできた人やから、見えんかったのや。〇〇家(私の旧姓)と、血がつながった子やったのかもな。」
と答えてくれた。

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コメント(1)
  •  作者です。最初の主題【血筋の証明】は「共鳴」でもよいかと思い、副題を設けました。

    2025/06/22/10:40

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