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不思議体験

沈丁花さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

血筋の証明(副題:血筋の共鳴)
長編 2025/06/21 10:02 3,610view

 ところが、不思議な出来事はそこでは終わらなかったのだ・・・・・・。
 お正月に私はまた、祖母と一緒に父方の先祖の墓参りに行った。Aちゃんはおしゃれなジャケットを羽織って、新年も一人で愛犬と小走りをしていた。厳冬の農村の空は柔らかく、透き通った青色を湛えている。その一方で土はしんとして乾いており、重苦しい雰囲気さえ纏っている。初春月の土壌の色は、墓地の石碑の色と混じりあって見えた。祖母と私が墓地についた時点では、Aちゃんの後ろには確かに誰もいなかった。それから、いつものように祖母と私は、先祖の墓所の掃除を始めた。祖母が線香に火をつける準備をしている時、私はAちゃんが歩いているあたりを見てみた――そしたら何ということだろう!去りし年のお盆に遭遇した、あの小さな女の子がまた、Aちゃんの後ろを歩いていたのだ・・・・・・!年明けの極寒のなか、あのノースリーブで、くすんだピンク色の無地のワンピースを着て。勿論、この日も祖母はAちゃんの後ろには誰もいないといった・・・・・・。

 Aちゃんと私は遠縁であるが、江戸時代に生きた一組の夫婦が共通の祖先であり、ごく薄い血縁関係である。それなのに、私はお盆とお正月という特別な日に、あのワンピースの女の子を目撃した。あの小さな女の子はもうこの世には存在しないが、一度はAちゃんの妹としてこの世に生を受けたのだろう。普段はAちゃんのお母さんの近くにいるが、お姉ちゃんっ子でもあるので、Aちゃんを追いかけるようにして歩いていたのかもしれない。あの幼い少女は5年生のAちゃんの後を、一定の距離を置いて歩いていた。その変わらぬ距離が、Aちゃんとの血縁の深さや年齢の違いを表しているように見えた。一応は縁戚にあたる私とたまたま波長が合い、自分が存在していることと、Aちゃんとの関係を知ってほしかったのだろう。

 補記すると、父方の祖母は少女時代に人魂を見たと言う。母方の祖母も、早世した実母が夜中に寝室の引き戸を開けて入ってくるのを見たという。私の父は平気で誰そ彼時の墓地に入っていくような豪快な人で、母も魑魅魍魎の類を見たことはないらしい。とにかく、二人の祖母の持つ第六感が私の体の中で合流し、あの日突然に発現したのかもしれない。

 この話は両親や色々な知り合いにも話したが、私の子供たちには絶対に伝えないつもりだ。子供たちも私も今は主人の姓を名乗っているが、私の霊感を子供たちが引き継いでいるかもしれないのだから。

 

3/3
コメント(1)
  •  作者です。最初の主題【血筋の証明】は「共鳴」でもよいかと思い、副題を設けました。

    2025/06/22/10:40

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