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不思議体験

ジョンガリさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

教室の後ろの扉に…
長編 2021/03/24 18:32 6,725view
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先生は、俺にはよくわからない古い日本語を喋っていた。

廊下の窓から顔を黒板に戻し、黒板の右上にある時計に目をやった。
時間的に部活に顔は出せそうもねぇな と俺は思ったが、俺が在籍する部活はぶっちゃけ茶飲み部みたいなものだったので行かなかったとてどういうものでもない。
ただ、俺がいない間に茶飲み話が楽しく盛り上がってるのかなと想像するとそれはそれで面白くないとも感じていた。

雨空のように鬱屈とした気持ちで、俺は再び廊下の窓に目をやろうとした。
すると扉の前には女生徒が立っていた。

なんだこいつ、いつの間に と俺は思った記憶がある。
顔は、余りよく覚えていないのだが、例えるなら廃校寸前のド田舎高校のイモ女みたいで、スカートを履いているからギリ女子だと認識できたのだったと思う。

今で言う所の陰キャ丸出しの女生徒が、なぜこうも俺の記憶に残っているのかというと、その女生徒が着ていた服に違和感があったからだ。

我が母校は制服がブレザー(ブレザーが嫌で俺はほとんど袖を通さなかった)なのだが、ブレザーの色が俺らが着用するそれとは違い、色が濃かったのだ。
具体的な色はボカすが、ピンクに対して深紅くらいにその色が違ったのだった。

といっても俺もその高校に通ってもう二年目、その色の濃い制服を着用する部活が、実はあることを知っていた。吹奏楽部だ。

同級生にこんなイモ顔女は居なかったから、吹奏楽部の一年か三年だろうと俺は推理していた。

一向に俺の顔を見ようとしないそのイモ女にメンチを切っていると、補習の先生が俺を当ててきた。

俺は全く話を聞いていなかったので、とりあえずへそを前に向けて座り直し、チョケた事を言って誤魔化した。
クラスに笑いが起こり、先生が少しムッとした顔をしたのをよく覚えている。

イカンイカンと思い、「勉強不足でわかりません。すいません。」と素直に(と云っても、決してよそ見はしていないという様なていで)謝り、先生の顔を立てた。

「…まぁいいでしょう」と言って先生は再び古い日本語を喋ることに没頭し始めた。

そろそろ真面目に授業聞くか と思ったが、俺は気まぐれを起こして再び扉の方に目をやった。

イモ女はまだ居た。

しかも今度は俺の顔を無表情で見ていた。
仮にずっとそこにおっ立っていたんなら、先生や俺の方を向いて笑ってた同級生やクラスメイトが気がつかねぇ訳ないよなぁ?と思い、少しゾッとした。

しかし、つい数秒前に先生から言外に釘を刺されていた俺は、そのイモ女に「なに見てんだよ」と声をかけるわけにもいかなかったので、やっぱりメンチを切るしかないのであった。

コロッケを売ってる肉屋さんかと見紛うほどメンチを切っていた俺に飽きたのか、イモ女は不意に左を向いて歩き去っていった。

幽霊ならここで消えてる場面だよなぁ?と思い、俺は首だけを扉からひょっこり出して黒板に背中を向ける体勢でイモ女を目で追った。

イモ女はまだ居た。

ほんの2メートルほど先に立ってこちらを向いていた。

俺は心底ギョっとしたが、すぐに肉屋のスイッチが入り、メンチを切る作業に移った。実際は虚勢混じりだった。

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