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ヒトコワ

タマゴンさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

福岡県虐待殺人事件
長編 2025/06/05 14:54 2,902view
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「私には、ただ一人の子どもがいる。」

彼女はそう言った。疲れ切った目で、でも必死に守ろうとしていた。

でも、現実は違った。

子どもは泣いていた。泣き止まない、声にならない泣き声。
母親は疲れ果て、追い詰められていた。
誰にも助けを求められず、誰にも理解されず、ただ孤独だった。

「寝ないから、静かにさせたかっただけ……」
「怒ったらいけないって、わかってたけど、どうしても手が出てしまった」

母親の言い訳はいつも、自分を責める言葉と共にあった。
誰かに責められる前に、自分で自分を罰していた。

子どもを抱きしめることができず、声をかける余裕もなく、
ただ暴力で“制御”しようとした。
でも、それは愛ではなかった。

彼女は心の中で叫んでいた。

「ごめんね。ごめんね、ごめんね……」

けれど、その叫びは届かない。
体は壊れ、命は奪われた。

「ただ、ちゃんと育てたかった。守りたかった。」
でもその“守り方”を知らなかった。
教えてくれる人もいなかった。

死んだ子どもはもう声をあげない。
だけど、彼女はその子の“痛み”を一生背負っていく。

それが、虐待の残酷な現実だ。

彼女を責めることは簡単だ。

でも、本当に必要なのは、「どうしてそこまで追い詰められたのか」を見つめ直すことだ。

孤独。無理解。貧困。疲労。支援の欠如。
そして、心の隙間に生まれた無力感。

母親は、子どものために何かをしたかった。
でも、助けを求める手がなかった。

だからこそ、私たちは目を背けずに、
彼女たちに寄り添い、支えなければいけない。

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