それは、亡くなった祖父のアパートを片づけていたときのことだった。
祖父はつい最近、眠るように亡くなった。
病院のベッドの上で、最後にこんなことを言った。
「魂ってのはな、行き場を失うと、映像に紛れて沈むんだ。撮られたまま、戻れん」
最初は意味がわからなかった。
でもその夜、アパートで見つけたあるSDカードが、すべての始まりだった。
そのカードの中には、短い動画がいくつも保存されていた。
どれも、部屋の中を固定カメラで撮っただけの映像。
祖父が布団に入って寝ている様子が、夜通し映っている。
最初はただの監視カメラ映像だと思っていた。
けど――
三つ目のファイルから、祖父が寝ている布団の「天井」に、白くて細長い何かが写りはじめた。
カメラには映らないはずの高さ。
でも、はっきりと見える。
指のようなものが、布団の上にいる祖父の顔を、そっと撫でていた。
祖父は起きない。
むしろ、笑っていた。
その晩、夢を見た。
誰かが自分の寝顔を覗き込んでいる夢だった。
白い、すりガラスのような顔。
目も鼻も輪郭もないのに、なぜか「誰かだ」とわかる。
ずっと、俺のことを知っていた人のような気がした。
夢から覚めて、ふとスマホを開くと――
見覚えのない動画があった。
俺が、眠っている様子を真上から撮った動画。
まさにさっきの夢の通りの角度。
撮った覚えなんかない。
でも、保存日時は「1分前」。
布団の奥で、寝ている俺の“顔”が、突然カメラの方を見て、こう呟いた。
「来てくれたんだね。もう、行けるよ」

























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