老若男女問わず、この国の死因の第一位は自殺。
なんせ31秒に1人が亡くなっている計算。実に日本の人 口の100人に1人が身近な人の自殺を経験するという頻度である。
…
仕事で大きな失敗をしてしまった。関係者からの信頼を失い、期待を裏切った。
自分の失敗の噂を耳にするのが怖い。
同僚社員の蔑みの目が辛い。
「そんな目で僕を見ないでくれ。」
…
憂鬱な月曜日。早朝。
混み合う乗客の待つ中、駅のホームに佇みながら。
ふと思う。
ここから身を乗り出せば。電車に身を投げれば。
楽になれる。
「どうせ、僕が死んでも誰も気にしない。」
僕は、迫る電車に向かって身を乗り出した。
誰も僕の行動を止める者はいない。
その時。
時間が止まったような気がした。
そこで、僕は気付く。
ネクタイを締めたサラリーマン。ブレザー着た女子高生。スーツを身に付けるOL。旅行鞄を抱えた女性。
…ホームに立つ大勢の人間。
その全員がぴたりと歩みを止め…。
携帯電話のカメラを僕に向けていることに。
数えきれない無数のカメラのレンズが僕を撮影している。
その隙間から見える無数の瞳は。
僕が身を投げる姿を物欲しげに見つめていた。
…
僕は迫る電車に身を投げるのをやめた。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 18票
シンプルだけど良い感じに怖かった。