私が中学生の時の話だ。
その時、私は父と母、弟の四人で温泉街へ来ていた。年の離れた弟は、まだ小学一年生だった。
「そこの奥さん、少し待ちなさい」
突然、年老いた占い師に呼び止められた。
母は戸惑ったように振り返り、小さく会釈する。
「結構です」
そう断って、通り過ぎようとしたその時。
占い師は父と弟を見比べ、首を振った。
「……気の毒に」
その言葉に、父が足を止める。
「何ですか?」
少し不快そうな声だった。
けれど、占い師は父ではなく、母を見たままだった。
「このご主人……前世では、あなたの息子でした」
一瞬、意味が分からなかった。
次の瞬間、父が吹き出した。
「ははっ、何ですかそれ」
母も苦笑した。私も弟も、何がおかしいのか分からないまま笑った。
でも、占い師だけは笑わなかった。
ゆっくりと、弟を見る。
「そして、その男の子、前世では――あなたの旦那さんです」
さすがに母も笑顔を失った。
「……え?」
「前世の縁は、時に今世まで残ります」
占い師はそれだけ言うと、私たちを追い払うように手を振った。
「もう行きなさい」
その後も、旅行中に何度かあの占い師の話になった。
「変な人だったね」
「前世なんて、本当にあるのかな」
父も母も苦笑しながら話していた。弟も笑っていた。
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