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不思議体験

洒落骨カルさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

不快きわまる悪夢
短編 2025/03/26 21:45 701view
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季節の変わり目でひどい風邪を引いてしまって
高熱にうなされた時、気持ち悪い夢を見たものだから、ここに吐き出させてもらおうと思う。

俺は部屋に監禁されている。
硬い金属製の椅子に座らされ、身動きが取れない。
両手は背もたれの後ろで縛られ、両足は杭のようなもので床に打ち付けられている。
痛みは感じなかった。
それよりも、足の裏から伝わる床の感触がたまらなく不愉快だったのをよく覚えている。
生ぬるい肉のような弾力があり、少し力を入れると液体が染み出てくる。
その液体も、床そのものも、ひどく汚れているというイメージがあった。
床から染み出る液体が、俺の足に開けられた傷穴から体内に入り込んでくるのではないかと思うと、発狂しかねなかった。

部屋は全体的に暗く、目前の数十センチ先がぼんやり見える程度の視界。
暗闇の奥からは、重苦しい機械の駆動音のような、巨大な生き物がうめいているような、そんな音が鈍く聞こえていた。
他に誰かいないかと声をあげてみても、まるで反応はない。

だが、確信があった。
この状況をどこかで眺めてニヤついている奴がいる。それも一人や二人じゃない。
俺はその観察者に向かって罵声を浴びせてみるが、声は例の音に飲み込まれてしまう。

そのままどれほどの時間が経ったかわからない。
足掻く姿を見せれば観察者を喜ばせるだけだろうと考え、俺は身じろぎ一つしないでただ椅子に座り続けた。
あの重く低い音は一向に鳴りやまない。音は一定ではなく、大きくなったり小さくなったり、高くなったり低くなったりした。
どれだけ性質が変わっても、不愉快であるというその一点だけは常に担保され続けた。

俺はうつむいたまま、小声で呪詛の言葉を吐き続けた。もう何日間もこの状況が続いているように感じる。
腹は減らないし、眠くもならない。正常な時間感覚はとっくに失われている。

膝の上に水滴が落ちてきた。
生暖かい、という感覚があった。色やにおいはわからない。もしかしたら床から染み出ている液体と同じものかもしれない。
そう思うと、何とかして膝をぬぐってやりたい衝動に駆られたが、どう足掻いても四肢の自由は取り戻せなかった。
苛立ちを覚えたまま顔をあげると、闇に慣れたのか、部屋の奥の様子が見て取れるようになっていた。
開けた視界の先には、巨大な球状の水袋が浮かんでいた。
「浮かんでいた」という表現は正確ではない……。水袋は天井から紐のようなもので吊るされているようだった。
紐の先は暗くてわからない。天井は随分高いところにあるらしい。
水袋は、透明な膜のようなもので覆われており、中は薄黄色の液体で満ちていた。
液体には粘度があり、膜の内壁にべとりと跡を付け揺れている。

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関連タグ: #カラス#声#夢
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