これは、とある不動産関係者から聞いたお話です。
あるワンルームマンションの一室で、怪奇現象が続いていた。
その物件は新築で、マンションが建つ前は駐車場だった。
なんの曰くもないはずのその4階建てのマンションは、ある3階の一室だけ住人が何度も変わっていた。
住人aさん曰く、最初はベランダに出てくるのだという。
ある晴れた日、ベランダで洗濯物を干し、窓を開け網戸のまま空気を入れ替えていた。
部屋の中でごろりと横になってスマホを眺め、ふとベランダを見た。
干してある洗濯物の間にまぎれて女の足が見えた。
風に揺れる洗濯物の後ろに、動かぬ青い裸足の足。
つま先はこちらを向いていた。
あまりにはっきり見えたので、本当に誰かいると思って起き上がった。
しかし、その瞬間に女の足は消えていた。
見間違いだと思おうとしてもそれはあまりに生々しかった。
温かい春の昼間だというのに鳥肌が止まらなかった。
次に見た時もベランダだった。
前回と同じ洗濯物の後ろに女の足があった。
そして、その隣にもう一人、子供の足も見えた。
白い靴下をはいていた。
幼稚園の制服の様な、ひざ丈のパンツの男の子のように感じた。
aさんは忘れかけていた恐怖がのど元までこみあげて固まった。
足は動くことなくこちらを向いていた。
二人とも膝から上は揺れる洗濯物でうまく見えなかった。
aさんは、もし目を離した瞬間、あの足が動いたらと思うと、目を離すことも自分が動くこともできなかったという。
どのくらいの時間そうしていたのかわからないが、足は、洗濯物が揺れるタイミングですっと消えた。
aさんはそれ以降、ベランダを使うことをやめ、部屋干しに変えた。
布団を干す以外はできるだけベランダに近づかなかった。
冬の夜、aさんは尿意を感じて目が覚めた。
明かりはつけず、トイレから戻ってベッドに潜った。
あたたかい布団の中からカーテンを引いた窓際をぼんやり眺めた。
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