高野さんはある日、飲み会でかなり帰りが遅くなった。
日付が変わる前になんとか最寄りの駅に着き、そこからは徒歩での帰宅になった。
久しぶりに会う友人たちとの再会を楽しみ、ずいぶんと盛り上がった。
みんな無事に帰れただろうかと思いながら冬の夜風で火照った顔を冷ましながら歩いた。
高野さんはあまりお酒が得意じゃないので酔うほど飲んでいたわけじゃなかった。
足取りもしっかりとし、10分すこしの道のりを歩く。
街灯の少ない公園横を通った時、前からベビーカーを押した夫婦が見えた。
こんな遅くに散歩かと、高野さんは少し驚いた。
しかし赤ん坊を育てたことのない自分にはわからないが、
きっと夜泣きで大変なのかもしれないと思い直した。
夫婦は見た感じまだ若く、20代半ばのように思えた。
すれ違いざまになんとなくベビーカーの中を見たら、
中には干からびた猫が何匹も折り重なるようにして入れられていた。
高野さんは息を止め、見なかったフリをして足早に通り過ぎた。
すれ違ってしばらくして、後ろでガン、と大きな音がした。
思わず振り返ると、女がベビーカーの中身を掴んで歩道のガードレールに投げつけていた。
男の方は、ぼんやりとそれを眺めているだけだった。
高野さんは走ってその場から離れ、自宅のアパートへと向かった。
翌日、バイトのために歩いて駅まで向かう途中、昨日のガードレールの所までくると
辺りには動物の毛が大量に散乱していた。
猫に対する虐待だーーーーーー
動物?へぇっ?