支那からのアンティーク電話
投稿者:ねこじろう (157)
どうにかこうにか開けた箱の中には、
一台の電話が納まっていた。
今はほとんど使われていないダイヤル式の古いもので錆びてはいるが全体に黄金色に鈍く輝き、本体や受話器に細かな金属細工が施されている。
博物館とかで見かけるような代物だ。
じいちゃんは嬉しそうにそれを箱から取り出すと、仏壇前にある台の上に置いた。
そしてその前で感慨深く腕組みしながら眺めている。
「じいちゃん、これって昔の電話?」
俺の問いかけにじいちゃんは大きく頷くと、また眩しげに見つめていた。
それからまた俺と弟は掃除を再開する。
そして小一時間もした頃だったと思う。
じりりりりりぃぃぃぃん!
じりりりりりぃぃぃぃん!
信じられないことに突然電話が鳴り出したのだ。
びっくりした3人は一斉にそっちに視線をやる。
━え?これって使えないんじゃないの?
などと思っていると、「誰ね?」とじいちゃんが大儀そうに立ち上がり電話のところまで歩き受話器を取る。
ボケてしまって、あり得ない状況さえも分かっていないみたいだった。
「ああ、もしもし、どちらさん?」
それからしばらくじいちゃんは要領を得ない様子でのらりくらり相手と話していたのだが、途中声色が変わる。
そして「○○ね?あんた○○とね?」と何か上ずった様子で言ってからさも嬉しそうに話しこみだした。
それから徐に受話器を置くと、満面の笑顔で「ちょっと行って来るばい」と一言言い、いそいそと出掛けて行く。
両親は各々掃除にはまっていて、気がつかなかったようだ。
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