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kanaさんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

【帰還】-事件記者 朽屋 瑠子-
長編 2025/01/19 00:28 2,343view
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「ヒャッホォォォ!!」
「アッハハハハ」

兵士たちの陽気な叫び声が甲板に響き渡る。
その様子を朽屋も笑いながら見ていた。

「チーフ、チーフも良かったら飛び込んでみませんか?」
近くにいた兵士の一人が朽屋にも飛び込めと誘ってきた。
他の兵士たちも朽屋を見る。

「噂は聞いてますよ。マスターチーフは『マーベリック』のコールサインで呼ばれてるんですよね」

「へぇ、よっぽどの暴れ馬なんですかね」

「そもそもなぜ日本人のあなたがこの米海軍の特殊作戦に参加してるんですか?」

話しかけたついででもないだろうが、朽屋に対する疑問をぶつけてくる兵士もいた。
朽屋は15名からなる特殊作戦班の一員としてこの船に乗っているが、一般兵には詳細は知らされておらず、不思議がる兵士もいた。朽屋にはわかっていた。まず米海軍の艦船になんで日本人が乗っているのか、小娘のくせに最専任上等兵曹とはどういうことなのか?そもそも女のくせに軍艦に乗るなんて・・・いろいろな思惑が渦巻いているのだ。米海軍には女性兵士ももちろんおり、今では禁忌とされた潜水艦乗りにも女性兵士はいる。だがその数はまだまだ少なく、ある程度の偏見はぬぐい切れてはいなかった。

朽屋はもういちいち答えるのもメンドクサイし、また答えてはいけないことも多いので、
だまってシャツを脱ぎ始めた。ベルトもはずしズボンも靴も脱いだ。

「おぉぉ」一瞬どよめきが上がる。
ベールを脱いだ朽屋の身体は鍛え抜かれた筋肉をしており、兵士として文句の付けようもないものだった。アンダーシャツの背中からは、なにか大きなタトゥーの一部が見え隠れしていたが、それがなんのタトゥーなのかは誰にもわからなかった。

朽屋はなんの躊躇もなく甲板を走り、キレイに海にダイブした。
「ヒューー!!」
「わぁぁぁ」
「さすが、マーベリック!!」

「イイ飛びっぷりだぜ!」
歓声があがる。いろいろなわだかまりを、朽屋はこのダイブでだまらせたのだ。

声を上げる兵士たちに手を振る朽屋。
が、しばらくしてその歓声が一瞬悲鳴に変わる。

「シャチだ!! シャチが出たぞ!!」

海面上を泳いでいた兵士たちが慌ててボートを目指す。

「ライフルだ!撃て!!」
「銃撃して追い払え!!」

上層甲板では兵士が走り回っている。
シャチは艦艇の底を通り抜けてきたので、誰もその接近に気づかなかったのだ。
シャチが朽屋のすぐそばまで来ている。巨大な背びれが海面上を走る。

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