もう他の魂らも一人残らず消えている。朽屋はやっとひとつ、深呼吸をした。
もう酸素もほとんど残っていない。
朽屋は水中で横になり、じっとしていた。最後のエネルギーをふりしぼったのだ。
身体が動かない。
35メートル・・・40メートル・・・45メートル・・・朽屋の身体は徐々に沈んでいった。
呼吸はほぼ止まっている状態だ。
海上では、ヘリがマンタレイを発見していた。
「哨戒ヘリ002、マンタレイを発見。・・・コックピットが開いています。搭乗員はいません」
「RIB(複合艇)を出せ。念のためSEALDsの隊員を乗せ、マンタレイの回収と周辺調査に向かわせろ。ヘリはそのまま搭乗員の捜索」
艦長からの指示が飛ぶ。下層甲板からクレーンに吊るされRIBが出る。
SEALDs隊員であったスティングレイ一等兵曹もそれに乗り込んだ。
「哨戒ヘリ001より、海面上に見られた光の柱は消失。微量の水蒸気の発生も止まりました。周辺海域にリヴァイアサンらしき影は確認できません」
・・・・・・・・・・・・
無人のマンタレイが発見されてからすでに1時間が経とうとしていた。
朽屋のエアータンクはとっくの昔に空になっているはずである。
捜索は、生存者救出ではなく、遺体確認の様相が強まってきていた。
スティングレイ一等兵曹は暗澹たる気持ちで海を見ていた。その時だ。
「シャチだ! 気を付けろ、ボートに近づいてくるぞ」
それを聞いた時、スティングレイの脳裏には3か月ほど前に開かれた【スイム・コール】での出来事が思い出されていた。
「チーフ・クチヤが助けたシャチ・・・」スティングレイは慌ててシャチの来たという方向を確認した。
「撃つな! そのシャチは撃つな!!」スティングレイはそう叫びながらシャチの方へ向かった。
シャチは、ゆっくりと水面に顔を上げた。
「人だ!! シャチが人を咥えているぞ!!」再び射撃体勢に入る兵士たち。
「待て、待て待て、撃つな! オレが保証する、そいつは敵じゃあない・・・おまえらは手を出すな!」
そう言ってスティングレイはシャチのいる海に飛び込んだ。
さすがの彼も、巨大シャチを目の前にして泳いだのはこれが初めてだった。
完全に一口で飲み込まれるサイズ感。だが、ここはシャチを信じるしかないと腹を決め、近づいていく。
「よーし、よしよし、いい子だ。チーフを見つけて届けてくれたんだろ? ありがとう、オレが引き受けるよ。だから大人しくしててくれよ・・・」そうシャチに語りかけながら、口元に手をやった。シャチは最初からそうするつもりだったかのように口を開き、スティングレイにそれを渡した。
「あ、ありがとうよ、あとは俺たちに任せろ・・・」そう言ってシャチの鼻先をポンポンと叩いた。シャチは水面から出した片方の目でスティングレイの顔を見ているようだった。


























kanaです。久しぶりの「朽屋瑠子」シリーズです。
このシリーズはあちこちにいろんなオマージュやらなんやら、過去作でも詳しく説明してないけど
知ってる人なら「あぁ、あれか?」と思うようなネタを散りばめていますので
そんなところもお楽しみください。
ちなみに、毎回出て来て朽屋に「ユー、〇〇へ、トベ!!」とだけ言って去っていく米兵のセリフは
「王立宇宙軍-オネアミス-の翼」で主人公のシロツグに対して「あ~~、なんて・・・そうだ、飛べ!!」とイキナリ突拍子もないことを言ってくる将軍をオマージュしています。
是非とも、ムー本誌に書いて送って欲しい!
大昔、漫画を書いてムーに送ってた人が、本誌に取り上げられたこともあるし、ルコも取り上げて貰って欲しい!
読み物として毎回楽しく拝見してます
朽屋さん、やってますねぇコレは。
待ってました!
クッチャルコさん首を長くして待ってました〜wこれからもどんどんお願いします♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪僕の中では今1番の最高の小説です!!
↑うれしいコメントの数々ありがとうございます。
自分で書いてて一番楽しい、それが朽屋瑠子シリーズw
怪談としてはどーよ、って話もありそうですが、今回は都市伝説ですから!!!
話によってジャンルも買えてます。
それにしてもですよ、1月19日に書いたコメントが公開されたのが1月28日って、
運営様、もう少しなんとかなりませんかね?
この前このシリーズ一気読みしましたけどめちゃくちゃ面白かったです!!
これからも期待してます(^ ^)
kanaです。↑コメントありがとうございます。一気読みしていただいて最高にうれしいです。
楽しんでいただいてよかったです。
これは公式に作品化していくべきレベルだと思う。
小説出てます?