満水になったコックピットで、朽屋は脱出ボタンを押す。
コックピットを覆っていたキャノピーが吹き飛び、朽屋は海中に身を投げ出された。
それと同時に朽屋を包み込むリヴァイアサンの白い手。
その指の隙間からピンク色の光が漏れる。
光はだんだん激しさを増して、やがてピンク色の球体のように輝きだした。
瞬間、リヴァイアサンの手は蒸発した。
朽屋の手にしたナイフを中心に、まばゆいばかりに光り輝いている。
「ほら、みんな、パライソ(天国)に行くよ」朽屋がそう念じると、光はさらにまばゆく輝きだし、リヴァイアサンを形づくっていた人間の魂たちが我先にと争うかのようにして朽屋の周りに集まりだした。そして光に触れた瞬間、美しい小さな光の粒子にはじけながら天に昇っていく。何千、何万という魂の昇華。それはまるで花火のようであった。
「こちら哨戒ヘリ002、海面から光の粒子が空に登っています。大量です。いったい、何が起きているのか!?」
「哨戒ヘリ001、C国艦と思われる艦が接近中です。艦番号は・・・796・・・ドンディアオ級情報収集艦です!!」
ミゲル・キースの艦橋も慌しい状況になってきた。
「艦長だ。この空域にジャミングをかける。警戒を厳にせよ。C国艦を近づけさせるな」
「了解」
「副長、ヒギンズとバンクーバーに応援要請」
さすがの朽屋も疲れ切っていた。彼女は普段なら魔弾を3発撃ってしまうと昏睡するかのように深く眠ってしまうという特性があった。今は2発を撃って、魂の浄化を行っているのだが、これほど多くの魂を浄化させたことは、朽屋にとっても初めての経験であった。
水深10メートル・・・20メートル・・・30メートル・・・
朽屋は徐々に水深を下げながら魂の浄化を行っていたが、始めてすでに45分。
背中のタンクもそろそろ限界を迎えそうになっていた。
「寒い・・・寒い・・・どうして・・・みんな離れていく・・・」
浄化された魂が次々と天に昇っていく中で、ひとつだけまったく動こうとせず、赤黒く妖気を発しているものがあった。それはまるでウミヘビのような姿をしており、水中でぐるぐると同じところを泳ぎ回った。
「そうか・・・おまえがリヴァイアサンの中心、海底に眠る魂を集め続けた張本人か」
「寒い・・・私は諦めない・・・また多くの魂を集め、かならず人間に復讐する・・・この暗く冷たい海底に押しやられた恨みを・・・」
「そうか、お前も最初は海に沈んだ犠牲者の一人だったのかもしれないな。・・・だがそれも今日で終わりだ。安心してあの世に旅立て」
朽屋がスペルを詠唱する。
「ルキフェル・アスタロト・ベールゼブブ・・・我は求め訴えるなり・・・地獄の業火をわが剣に与えよ・・・」
ピンク色に光っていた朽屋のナイフがだんだんと、オレンジ色・・・黄色・・・白色と輝きを増し、もう肉眼で直視できないほどに光りだした。と同時にナイフの周囲から泡が立ち昇る。海水がナイフからの熱で一瞬にして蒸発しているのだ。
「うぉぉぉ、なんという光だ、なんという暖かさだ!!」
リヴァイアサンがその光に見とれて身動き一つできなくなっている。
そこへ一気にナイフを突き立てる朽屋。
「ぎゃあぁぁぁぁ」
輝きの中、リヴァイアサンは断末魔を上げ、バラバラになりながら消滅していった。

























kanaです。久しぶりの「朽屋瑠子」シリーズです。
このシリーズはあちこちにいろんなオマージュやらなんやら、過去作でも詳しく説明してないけど
知ってる人なら「あぁ、あれか?」と思うようなネタを散りばめていますので
そんなところもお楽しみください。
ちなみに、毎回出て来て朽屋に「ユー、〇〇へ、トベ!!」とだけ言って去っていく米兵のセリフは
「王立宇宙軍-オネアミス-の翼」で主人公のシロツグに対して「あ~~、なんて・・・そうだ、飛べ!!」とイキナリ突拍子もないことを言ってくる将軍をオマージュしています。
是非とも、ムー本誌に書いて送って欲しい!
大昔、漫画を書いてムーに送ってた人が、本誌に取り上げられたこともあるし、ルコも取り上げて貰って欲しい!
読み物として毎回楽しく拝見してます
朽屋さん、やってますねぇコレは。
待ってました!
クッチャルコさん首を長くして待ってました〜wこれからもどんどんお願いします♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪僕の中では今1番の最高の小説です!!
↑うれしいコメントの数々ありがとうございます。
自分で書いてて一番楽しい、それが朽屋瑠子シリーズw
怪談としてはどーよ、って話もありそうですが、今回は都市伝説ですから!!!
話によってジャンルも買えてます。
それにしてもですよ、1月19日に書いたコメントが公開されたのが1月28日って、
運営様、もう少しなんとかなりませんかね?
この前このシリーズ一気読みしましたけどめちゃくちゃ面白かったです!!
これからも期待してます(^ ^)
kanaです。↑コメントありがとうございます。一気読みしていただいて最高にうれしいです。
楽しんでいただいてよかったです。
これは公式に作品化していくべきレベルだと思う。
小説出てます?