朽屋は、周囲から漏れ聞こえる人の声に目を見開いた。
コックピット全体を覆うリヴァイアサンの手の平は白い大きな塊ではなく、小さな半透明の袋の中に白い煙が充満しているようなそんな代物だった。それが隙間なくびっしりと寄り添っている。朽屋が驚いたのは、その小さな袋ひとつひとつに人間の苦悶の表情がうっすらと浮いていることだった。彼らは絞り出すように怨念のような言葉を発していた。
「これが、リヴァイアサンの正体!?」
朽屋は一目見て、これが人間の魂の寄せ集めであることを理解した。
何千・・・何万という数の人間の魂が、この海の中で身を寄せ合ってリヴァイアサンの形を成していたのである。やがて朽屋の脳裏に様々なシーンが浮かぶ。彼らの残留思念が、過去の様子を朽屋に見せているのである。
軍の訓練で水中に潜った潜水艦が、潜水後すぐに浸水し、沈没、圧壊。
阿鼻叫喚の中、乗員53名全員死亡。
潜航中、突然の事故で沈没する原子力潜水艦。成す術なく乗員129名全員死亡。
演習用魚雷から高濃度過酸化水素が噴出、爆発が爆発を呼び沈没。乗員108名全員死亡。
即死を免れたものの、密室に閉じ込められ、真っ暗な中、徐々に酸素がついえて死亡した者もいた。
潜水艦ばかりではない。第二次大戦時に沈没した戦艦、空母、巡洋艦、輸送艦・・・海の藻屑と消えた艦艇に取り残され、脱出できずに海底の墓標にまとわりつく魂たち。天国へ登る道に迷い、深海に取り残された魂たち。
それを、リヴァイアサンは世界中の海を回りながら、一人、また一人と蒐集していたのだ。
やがて巨大な力を得たリヴァイアサンは、さらなる力を求めて船を襲うようになっていた。
コックピット内に注水する朽屋。マスクをし、タンクのバルブを開け、水中活動の準備に入る。そして出撃前に手渡された黒いナイフを抜き、目の前に掲げた。
(神ともにいまして
ゆく道をまもり
あめの御糧(みかて)もて
力をあたえませ・・・)
朽屋が詠唱を始めると、ナイフの刃が徐々に光り始めた。
「Lord, dismiss us with Your blessing;
Fill our hearts with joy and peace;
Let us each, Your love possessing,
Triumph in redeeming grace:
O refresh us, O refresh us・・・
(主よ、汝の祝福で我らを解き放ちたまえ
喜びと平穏で心を満たしたまえ
汝の愛と救いの恵みを享受せん
我らを癒したまえ・・・)」
























kanaです。久しぶりの「朽屋瑠子」シリーズです。
このシリーズはあちこちにいろんなオマージュやらなんやら、過去作でも詳しく説明してないけど
知ってる人なら「あぁ、あれか?」と思うようなネタを散りばめていますので
そんなところもお楽しみください。
ちなみに、毎回出て来て朽屋に「ユー、〇〇へ、トベ!!」とだけ言って去っていく米兵のセリフは
「王立宇宙軍-オネアミス-の翼」で主人公のシロツグに対して「あ~~、なんて・・・そうだ、飛べ!!」とイキナリ突拍子もないことを言ってくる将軍をオマージュしています。
是非とも、ムー本誌に書いて送って欲しい!
大昔、漫画を書いてムーに送ってた人が、本誌に取り上げられたこともあるし、ルコも取り上げて貰って欲しい!
読み物として毎回楽しく拝見してます
朽屋さん、やってますねぇコレは。
待ってました!
クッチャルコさん首を長くして待ってました〜wこれからもどんどんお願いします♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪僕の中では今1番の最高の小説です!!
↑うれしいコメントの数々ありがとうございます。
自分で書いてて一番楽しい、それが朽屋瑠子シリーズw
怪談としてはどーよ、って話もありそうですが、今回は都市伝説ですから!!!
話によってジャンルも買えてます。
それにしてもですよ、1月19日に書いたコメントが公開されたのが1月28日って、
運営様、もう少しなんとかなりませんかね?
この前このシリーズ一気読みしましたけどめちゃくちゃ面白かったです!!
これからも期待してます(^ ^)
kanaです。↑コメントありがとうございます。一気読みしていただいて最高にうれしいです。
楽しんでいただいてよかったです。
これは公式に作品化していくべきレベルだと思う。
小説出てます?