ポラロイドの呪縛
投稿者:ねこじろう (153)
3枚目も4枚目もそれ以外も全て同じ角度から撮られているが、3枚目から4枚目、4枚目から5枚目と、母親は少しずつ痩せ細りどす黒くなっていくようだった。
写真は変わり行く様を撮影した記録のようにも見える。
そして最後の1枚になるとその姿はすっかり変わり果てて髪は抜け、顔はミイラのようになってしまっていた。
俺は足元に写真と紙を落とし玄関ドアを開き、渡り廊下に出る。
そして正面奥の方の暗がりに視線をやった。
そしてはっと息を飲む。
人が立っていた。
ロイドくんだろうか?
目を凝らしてみる。
白いランニングシャツに黒の半ズボン姿で小柄な体躯。
どこか悲しげな顔をしているようにも見える。
ただ以前と比べるとかなり痩せていて、首や手足は棒のようだ。
恐る恐る歩み寄っていくと、やがてその姿は幻のようにスーッと暗闇に吸い込まれてしまった。
俺は引かれるようにふらふら歩き進み、とうとうロイドくんの家の玄関ドア前まで来てしまう。
呼び出しボタンの上には「浅川」という表札。
そして恐る恐るドアノブを握り力を込めると、あっさり回転した。
それから隙間から声を掛けてみる。
あのお、すみません浅川さん、いますかあ?
何度か声を掛けてみたが、何の返事もなかった。
思い切って玄関内に踏み込む。
正面に伸びる廊下は暗く、しんと静まりかえっていた。
浅川さーん、いますかあ?
やはり返事はない。
いけないこととは思ったが「すみません、お邪魔しますよ」と靴を脱ぎ、廊下に上がった。
そして突き当たりまで歩くと居間のドアを開いてみる。
カーテンは全て閉じられていて暗く、室内はどんより静まりかえっていた。
入口脇にある電気のスイッチを押す。
一気に部屋の全貌が明らかになる。
室内はあまりきれいではなかった。
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