机の半分ほどの上に花が載った時、誰が言ったかもう一度祠を探すことになった。
あの怪しい祠を探し回った。
すると、あの時はなかった本が置かれていた。新しく置いたわけではない。
薄汚れた、苔むしたような本。
けれどもなぜか読めた。
題は「銭蛇」。
そこには、あの噂に加えて処置も、歴史もあった。
戦国時代。銭を盗み盗んだ黒蛇がいた。
時の覇者信長は商人の黒蛇に対する文句を聞きつけ、黒蛇を自らで斬り殺そうとした。
すると、黒蛇は面妖にも言葉を話し、『願いはあるか、叶えてやるから命は助けろ』
信長はその言葉に揺らぎ、天下統一を望んだ。本能寺の変の2週間前のことだ。
その後も黒蛇は悪事を働いた。江戸時代にもその姿は目撃されている。
しかし明治時代。西洋の退魔氏がこの蛇を多くの銭で封じ込めた。
その後、5円玉の穴に黒蛇は住まうている。
もしも銭蛇に願ってしまったならば、それを知らぬ人に一切を伝えず、盗みを働くべし。
盗んだ銭を祠に捧げれば、祠を開かせないようにするべし。
そうすれば、銭蛇から追われることはなくなる。
そんな、内容だった。
皆、その通りにした。
でも私は今、それを破る。
これは語り継ぐべきものだ。そしてこれは懺悔だ。贖罪だ
私はあの時犯してしまった盗みはずっと心を締め付けてきた。
いきなりこんな話しをして申し訳ない。
ただ、実家の弟、今は教師をしていてね。
その弟から、祠の話が出てきたんだ。
夢で、否、現実で、蛇が這う音と金同士がぶつかる音が聞こえるんだ。
きっと、誰かが祠を開けたんだ。
どうか、この話を受け継いでくれ。
私は多分もう長くない。
皆に繋げてくれ。縷縷として。
関東T県S市の山には近づくな。銭の音と蛇の這う音が聞こえたら盗め。
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