黒蛇の住まう穴
投稿者:田沼縷縷 (5)
冷え込んできたこの頃。
師走は、友人の命月です。
幼馴染で、想い人で、そして「訛り村」や近い将来私が語るだろうこれからの話の素である友の命月です。
そんな彼女の、最後の話を語らせていただきます。
想いを引き継いで。受け継いで。
それではお聞き下さい。
「黒蛇の住まう穴」。
5年前の、11月末。
久しく会っていない彼女に呼び出され、縁もゆかりもない九州の地へと赴きました。
小洒落たカフェに座り、少し早いマフラーを巻いた彼女は、儚げな表情をしていたのを覚えています。いや、彼女が語ったことは一言一句とも忘れたことはありません。
彼女は、つくやいなやいきなり語り始めました。
小学校の頃。こんな噂が広まったのを知っている?
知らないよね。なぜかクラス内でしか広まっていなかったから。
【裏山の祠の穴に住まう黒蛇は願いを叶える代わりにどこまでも追って命を奪う。しかし、願いが叶った後、正しい処置を取れば命は取られない】
欲望塗れた小学生たちは、命が取られるかもしれないけれど、処置があると聞きほぼ全員が毎日祠を探す日々を送っていた。
皆、少し諦めたある金曜日。とうとう祠が見つかった。
自由時間に、クラス全員でその祠に行って、隅から隅まで探し回った。
けれども何もなく、見つかったのは“何故か全員分ある”の5円玉だけ。
少し、拍子抜けって感じだったよ。
けれども、そこからだった。
土日を挟んで月曜日に、1人が言った。
『5円玉に願ったら、望みが叶った』
それから皆んなすぐに5円玉を握り締めて願っていた。
私も、願った。『楽しく生きられますように』
それが間違いだった。
最初に死んだのは月曜日に願いが叶ったと言った子だった。
首に蛇が巻き付いたような痣がついて、死んでいた。
すぐに教室中パニックになった。
結局のところ、噂で言われた処置が一切分からなかったから。
その噂を知った担任教師が5円玉に願って聞いた。
『どうすれば命は奪われない』
そう願って、次の日に、教室に花がもう一輪増えた日に。
先生はとても申し訳なさそうに言った。
『分からない』
さらにその次の日。先生は死んだ。
死ぬ順が願った順番じゃないとわかって皆怯えて日々を過ごした。
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