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不思議体験

田沼縷縷さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ねねちゃん
短編 2024/11/19 15:03 120view

小学生の頃、やけに怖い話を語る子が同級生にいませんでしたか?
これから語らせていただくのはそんな女の子の話。
私の同級生だったねねちゃんが語った話です。
もう10年も前の話なので至らぬところもありますがご容赦を。

それではお聞き下さい。「ねねちゃん」。

小学校5年生。幼子たちが様々なことに興味を持つ多感な時期です。
この頃人気を博したのはまさしく「怖い話」でした。
皆で集まって順繰り、もしくは挙手制で怖い話を語っていました。
私はそういう話が好きではなく、むしろ苦手で周りに合わせて仕方なく怯えながら話を聞いていたのですが、どうしても自分の番が回ってきてしまいます。
そこで言葉が詰まり、どうしようかと悩んでいる時に助けてくれたのがねねちゃんでした。
私はねねちゃんのことをあまり知りませんでした。
この時になるまで印象なんてなかったほどです。

彼女の怖い話は一級品でした。まるで本当にあったかのように語り、決まってオチは言わずに微笑みます。それがまた、皆の好奇心と恐怖心を掻き立てたのでしょう。
怖い話を言いあう遊びはいつのまにかねねちゃんの怖い話を聞く遊びに変わっていました。

えらく冷え込んだあの日の放課後もねねちゃんの話を聞いていました。
ねねちゃんの名前は誰も知りません。
必ず話し始める時にねぇねぇ、と言うのでねねちゃんでした。

「ねぇねぇ、知ってる?町外れの青屋根の家あるでしょ?あの家でどんな怖いことがあったか。
知ってる?」
青屋根の家。物心ついたときには廃屋になっていて、子供たちの中では有名な場所でした。
皆それぞれ、あの家について勝手に怖い話を作って話すからです。
知ってるか、と問われた私たちは口々にいいます。
殺人鬼の住んでいた家とか、呪物まみれの家だとか。
「ううん。全部違うよ。今日はね、あの家の話だよ。」

この年頃の子供は否定されると少なからず苛立つものですが、そんなこともなく。
皆ねねちゃんの話に聞き入っていました。
ねねちゃんはまた、本を読みきかせるように語り始めました。

「むかしむかし、青屋根の家には優しいお母さんとお父さん、それとちょっとわがままでけれどとても可愛い女の子が住んでいました。3人は毎日笑顔で幸せそうに生きていました。
あるクリスマスイブ、女の子がお父さんにねだります。
『私、サンタさんが欲しいな。サンタさんがいれば、いつでもなんでも貰えるね。』
お父さんは言いました。
『サンタさんは忙しいから君のものにはなれないよ。他には何か欲しいかい?』
女の子はわがままを言いました。『じゃあパパがサンタさんになってよ』お父さんは断りました。女の子は『お母さんに頼んでみよう。』と言いました。
次の日、お父さんがリビングで見たのはクリスマスツリーの足元で倒れる、真っ赤に染まったお母さんの亡骸でした。
女の子は言いました。
『サンタさんは男の人だから、お母さんはサンタさんになれなかったよ。お父さん、サンタさんになってよ』それから3人を見た人はいません。女の子は今も、あの家でサンタさんを待っています。おしまい。」

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