S村からの電話
投稿者:ねこじろう (147)
何度となく上司に注意を受けたようなのだが、一向に彼の営業トークが変わることはなかったな」
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「そしてあれはちょうど午後9時くらいだったと思う。
居残り組は俺を含め3名くらいになっていた。
皆そろそろ疲れが限界にきていたのか電話の会話もあまり聞こえなくなってきていて、事務所内はどんよりとした諦めの雰囲気が漂いだしてきていたんだ。
ちょうどその頃だ。
突然電話の着信音が鳴り響いたんだ。
それは仲谷のデスクからだった。
一斉に皆の視線が集中する。
慌てて受話器を取った彼は、しばらく相手と話し込んでいた。
それでようやく話がまとまったのか受話器を置くと、地図帳で場所を確認してから荷物を準備してた。
それから俺の席まで来ると『じゃあ、S村まで行ってきます』と笑顔で言い、意気揚々と事務所をあとにしたんだ。
まあざっとこんなことを村山さんに報告すると、腕組みしていた彼はいきなり『S村?』と言うと、おもむろに口を開き続ける。
『確かにM市北部の山あいに小さな村がいくつかあるが、S村というのは初耳だな。
あの辺りには俺も昔営業で行ったことはある。
H村というところだったが、荒れ果てていて人の住んでるような感じのしないところだったな。
何軒訪ねても留守で途方に暮れて農道を歩いていると、前方から割烹着姿のばあ様が歩いてくる。
それで俺、そのばあ様に近辺のことを聞いてみたんだ。
そしたら日に焼けた皺だらけの顔で眩しげに見上げながらこう言った。
『この辺りはな元々土地が瘦せていて農作物が育ちにくくてな、昭和の初めに何度か酷い飢饉に見舞われてな、たくさんの村人が飢えてあの世に行き無くなった村もあった』
『出かける前に俺の席に来た仲谷と少し話したんですが、S村というのはそのH村の西隣にある村で村入口の道沿いに首なし地蔵が奉ってあると電話をかけてきた婆さんが教えてくれたんだと言ってました』
俺の説明に村山さんはまたしばらく腕組みし考えていたが、再び口を開く。
『田嶋悪いが明日の日曜日だけど、俺に1日付き合ってくれ。
もちろん日給は払うから』
『どこにですか?』
『S村だよ。
もしこのまま今日も仲谷が戻って来なかったら、社としても警察に連絡しないといけないことになる。
その前に俺たちで彼を見つけたいんだよ』」
怖かったですヽ༼⁰o⁰;༽ノ
お祓いしてもらえばいいのに。
コメントありがとうございます。
━ねこじろう