子供が大人になるまでは
投稿者:太山みせる (35)
蝶子には生まれてくる子供の為だから離婚してくれ、と強く出たんだ
それなのに承諾しないどころか、自分の腹にもあなたの子供がいる!なんて存在しない子供をこれまた主張してきた
だから、
「お前がいるという、腹の子は産まれないじゃないか」
と正論を言ったら義父に、
「そこまで言うな」
と怒られたけど、結局は他に子供がいるんだからと義父の説得で、離婚してもらえたんだ
そして明子と再婚した
実家で同居してくれた明子は優しくて、オレの両親とも仲良くしてくれた
息子も生まれて、それがお前の知っている長男の良明(よしあき)だ
オレの名前の良彦(よしひこ)の『良』と明子の『明』を取って、そう名付けたんだ
オレは転職もした
大企業には入れなかったけど、小さな会社でコツコツ頑張ったよ
だが良明が1才になった頃、突然、家に蝶子が突撃して来たんだ
「あなた、赤ちゃんが生まれたわ!」
と、等身大の赤ん坊人形を抱いて迫って来たんだ
その人形は寝かせると目蓋が閉じて、起こすと開く仕掛けがあって、昭和時代に流行った物なんだけど、
「それ人形だよ」
と教えても、動くから人形ではないと言い張って、寝かせたり起こしたりしながら、必死に目を開け閉めさせるんだ
「ほらぁ!あなたの赤ちゃんよ!あなたの『良』と私の『子』で、良子(よしこ)と付けたの、だから戻ってきてよ。戻らなければあなたの家族を殺すわよ。私と一緒に良子を育てるのよ」
と脅して来たんだ
相変わらず顔立ちは美しかったけど、髪はボサボサで服のボタンもズレてたし、目の焦点も合っていなくて、恐ろしかった
元義父に連絡して回収してもらったよ
そして精神病院に入れられたんだ
でも、ここで終わらなかったんだ
数年後、仮退院した時に、なんと蝶子は自分の屋敷に火を放って死んだんだ
葬式には行ったよ
元義父は項垂れていた
屋敷も全焼したと聞いて、もう蝶子には何の思いもなかったし思わず、
「立派なお屋敷が燃えて、残念でしたね」
と本音を言ってしまったんだよ
元義父は顔を真っ赤にして怒り出した
「娘がこうなったのはお前にも責任があるだろう!娘より、家の方が残念なのか」
と言って掴みかかられて、痛かったな…
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