学校近くの廃墟にあった開かない金庫の話
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/06/04
14:45
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「学くん!今助けるからね」
そう言うと森本はその金庫のレバーを握りしめ思い切り下げようとするのだが、びくともしない。
ー卓くーん、
せまいよ~
くらいよ~
飯島の泣き叫ぶ声を聞きながら、森本は両手で必死に力を込めて何度もレバーを下げようとしたがダメだった。
左奥の壊れた窓からはもう夕日が差し込んできており、部屋全体を朱色に染めている。
もう下校の時間はとっくに過ぎていた。
何度試みてもレバーは下がらない。
金庫からはすすり泣く学君の声が聞こえてくる。
ーどうしよう、どうしよう
森本の心の中には焦りと不安の気持ちが沸き起こってきていた。
そしてとうとう
ーだめだ、大人の人に来てもらおう。
そう小さな胸の中で決断すると彼は
「ごめん、学くん、ちょっと待ってて、すぐ戻るからね!」
と言い残し急いで廃墟を出た。
背後から聞こえてくる学君の泣き声を振り切りながら……。
※※※※※※※※※※
薄暗い竹藪の中を懸命に走りながら、なぜだか彼の脳裏にはその日の朝の全校集会の様子が浮かんでいた。
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